病態や仕組みの理解を基本的背景にし,実用的で大胆な改訂を行った


透析療法マニュアル 改訂第6版

  • 【監修】 鈴木 正司
  • 【編集】 信楽園病院腎センター
  • 【ISBN】 4-88875-174-9
  • 【本体価格】 5,600円
  • 【刊行年月】 2005年 07月
  • 【版組】 B5判
  • 【ページ数】 672ページ
  • 【在庫】 なし
  • 【改訂版】 透析療法マニュアル(改訂第7版)

析療法マニュアル<第6版>の刊行にあたって
本書を昭和61年の6月に初版を上梓してからすでに19年が経過し,その間に5回の改訂を繰り返した.取りも直さずこの分野の研究・開発・画期的な薬剤の登場・経験の積み重ねなどが多く,それらを臨床の場にフィードバックして,治療法が激しく変化したことを物語るものである.
またこの19年間で慢性腎不全の原因疾患の1位が,慢性腎炎から糖尿病性腎症に変わった.その結果,これまで以上に困難な合併症と対峙せざるを得ない状況になっている.
一方でこの領域での発展を見れば,活性型ビタミンD,副甲状腺にエタノールや活性型ビタミンDを直接注入する治療法,カルシウム感受性受容体に直接作用する薬剤などが実用あるいは実用準備状態になった.リン吸着剤はアルミゲルからカルシウム製剤に移行し,さらに血清カルシウムを上昇させない塩酸セベレマーが登場し,現在では炭酸ランタンの臨床治験すら進行している.
輸血と蛋白同化ステロイドしか無かった腎性貧血の治療にも,エリスロポエチンが登場した,新たに半減期の長い2種のエリスロポエチンの誘導体も臨床治験が進行中である.さらに,新しい抗凝固剤の恩恵は極めて大きい.
降圧剤ではアンギオテンシン受容体拮抗剤が登場し,反面では低血圧への薬剤も新たに登場した.それでも透析中の血圧低下を防止して安楽な治療を提供することは,未だに大きなテーマである.
透析液中の僅かな酢酸をも皆無にする努力から,無酢酸バイオフィルトレーション治療法が実用化され,さらに無酢酸透析液の臨床治験が始まるところでもある.透析膜も物質透過性,生体適合性ともに大きく進歩し,モジュール状態では逆ろ過が無視できないことも明らかになり,むしろ逆ろ過を臨床に応用する検討も進んでいる.透析液の清浄化による臨床効果にも関心が向けられ,標的レベルを確保・維持するための技術要求も高くなっている.
装置もコンピュータ化が急速に進んでおり,各種の安全装置,徐水制御装置に加え,コンピュータに連結した中央管理・監視システムまでが登場している.

この度の第6版では従来までの本書の形態にこだわらず,病態や仕組みの理解を基本的背景にして,実用的で大胆な改訂を加えることを目標に作業を進めた.編集作業を指揮してくれた桜林 耐先生を中心とする当院の腎グループの医師,看護師,臨床工学士,薬剤師,栄養士,メデイカルケースワーカーの諸君の努力に対し,感謝の言葉を申しあげたい.透析療法にはまだまだ解決されていない問題が多く,本書もいずれ改訂を加えるべき時期が来ることが望ましい.

平成17年5月 信楽園病院 院長 腎センター:鈴木 正司
目 次
第I章 血液浄化療法の原理
  • 血液浄化療法とは/血液浄化療法の適応疾患・病態/血液浄化療法の原理/血液浄化膜/血液浄化器の種類と性能指標/より良い血液浄化器の条件/吸着材/血液浄化療法の種類/血液浄化療法の生体への影響
第II章 末期腎不全の血液浄化療法
慢性腎不全
  • 概念/病期分類/症状/残存腎機能の測定と評価/原因疾患/治療/慢性透析治療の現況
透析療法導入
  • 導入基準/血液浄化療法の選択
体外循環による血液浄化療法
  • 体外循環による血液浄化療法の構成・機器/患者監視装置/水処理装/ 透析液の清浄化/透析液・置換液/抗凝固薬/ブラッドアクセス/透析療法への導入から維持/血液透析時の患者監視・点検項目/適正治療指標
腹膜透析療法
  • 腹膜透析療法とは/適応/透析処方/導入の実際/カテーテルケア/患者教育/合併症/腹膜透析療法中止
末期腎不全の腎代替治療
  • 維持透析と定期検査/栄養/運動療法
第III章 長期透析に伴う合併症
循環器
  • 血圧/動脈硬化症/虚血性心疾患/閉塞性動脈硬化症/心不全/心弁膜症,感染性心内膜炎,心外膜炎/不整脈
呼吸器
  • 呼吸器
消化器
  • 口腔症状/消化管/肝疾患/胆・膵疾患
神経
  • 脳血管障害/認知症,透析脳症/精神障害/薬剤性障害/睡眠障害/末梢神経障害-尿毒症性神経症/自律神経障害
腎性貧血
  • 腎性貧血/エリスロポエチン(EPO) 療法
代謝異常
  • 鉄代謝異常/脂質代謝異常/糖代謝異常/蛋白質・アミノ酸代謝異常/ビタミン代謝異常/高カリウム血症/アルミニウム中毒/微量元素/カルシウム・リン代謝異常
内分泌異常
  • 内分泌異常
免疫異常
  • 免疫異常/感染症/悪性腫瘍/透析アミロイド症
その他
  • 運動器の異常/泌尿器系の異常/眼異常/皮膚異常
第IV章 透析患者への薬物投与
  • 透析症例の薬物動態の基礎/おもな薬剤の使用方法
第V章 透析患者の外科手術
  • 外科手術の実態/外科手術時の患者管理
第VI章 特殊な症例の血液浄化療法
  • 糖尿病性腎症腎不全症例の透析/糖尿病透析症例の合併症と予後管理/糖尿病性腎症患者の血糖コントロール/糖尿病性腎症患者の食事療法/糖尿病性腎症患者の薬物療法/糖尿病性腎症患者の看護と対策/高齢者透析/高齢透析患者の看護と対策/小児透析/在宅透析
第VII章 腎移植
  • 腎移植の概説と現況/組織適合性/適応と禁忌/腎移植の合併症/患者教育
第VIII章 透析医療のリスクマネジメント
医療事故
  • 透析液関連-透析液の濃度異常/透析液関連-透析液の温度異常/血液回路関連
血液浄化療法室内感染対策
  • 基本的感染防止対策の遵守/血液浄化療法室の管理
災害対策
  • 停電/火災,地震,その他/スタッフ・患者教育,災害ネットワーク
第IX章 透析患者のQOL
  • QOL評価/末期腎不全患者の心理と自己管理
第X章 透析医療の社会・経済
  • 透析と医療経済-血液浄化療法の医療費/社会復帰
第XI章 末期腎不全以外の血液浄化療法
急性腎不全
  • 概念/原因/診断/臨床症状/経過・病期分類・予後/治療-保存療法/血液浄化療法/看護
多臓器不全
  • 多臓器不全症候群/劇症肝炎や重症肝不全増悪/重症急性膵炎
薬物中毒
  • 薬物中毒の治療/血液浄化療法の適応/パラコート中毒/有機リン中毒/グルホシネート中毒
その他
  • 神経筋疾患/膠原病/高脂血症/炎症性腸疾患/造血器疾患