新薬も含め実地臨床に必要なup-to-dateの知識を解説


消化器がん化学療法 2006

  • 【編】 市倉 隆
  • 【編集】 杉原 健一/藤盛 孝博/五十嵐 正広/渡邉 聡明
  • 【ISBN】 4-88875-180-3
  • 【本体価格】 5,600円
  • 【刊行年月】 2006年 02月
  • 【版組】 A5
  • 【ページ数】 308ページ
  • 【在庫】 なし

消化器がん治療において化学療法は欠かせないものになってきた.この領域の進歩はめざましく,よりup-to-dateの情報が求められる.今回,内容を一新し,さらには巻末には各著者が日常行っている具体的な投与例をまとめた.
消化器がん化学療法2006序文
消化器がん治療において化学療法は欠かせないものになってきた.進行・再発の胃・大腸癌ではbest supportive care群と比較して化学療法群で生存期間の延長がもたらされ,化学療法の有用性が明らかである.膵・胆道癌でも化学療法の生存期間延長への寄与が報告されている.一方,標準治療の観点からは,胃癌治療ガイドライン(第2版,2004年4月)では特定のregimenを推奨することはできないと記載されている.大腸癌では従来5-FU/leucovorin療法が標準治療とされてきたが,種々のregimenの有用性が報告され治療の選択肢が増えてきた.また近年,生存期間の延長にはsecond line,third lineの化学療法が重要であるとの認識が定着し,日常診療では個々の患者に接して悩むことも少なくない. 癌の増殖・浸潤・転移の機序に関する分子生物学的研究の進歩は著しく,分子標的治療が次々に開発され,その一部は臨床応用されつつあり今後の発展への期待はきわめて大きい.また個々の腫瘍の抗癌剤感受性や個々の患者の副作用リスクに関する遺伝子レベルでの解析もすすめられ臨床応用が期待される.さらに薬剤耐性機序の解明と耐性克服のための薬剤の開発は今後の大きな課題となろう.
わが国では消化器がんに対する化学療法のかなりの部分を化学療法専門医ではなく外科医が担っているのが現状である.消化器外科医が多数参加する学会においても化学療法のセッションは大変盛況でその関心の高さが伺われるが,発表されるさまざまなregimenの成績をいかに評価し臨床に取り入れるかを判断するのは容易ではない.2004年4月に,化学療法を専門としない医師が実地臨床で必要な知識を得られるようなハンドブックとして『消化器がん化学療法2004』が刊行された.その後のトピックスとしてoxaliplatinの認可,大腸癌に対するS-1の承認が注目され,また近い将来,大腸癌に対するcapecitabine,膵癌に対するS-1の承認も見込まれる.さらに分子標的治療として大腸癌に対するbevacizumabも申請に向け準備中というように,この領域の進歩はめざましく,よりup-to-dateの情報が求められる.今回,『消化器がん化学療法2006』として内容を一新した.巻末には各著者が日常行っている具体的な投与例をまとめた.ご多忙のなか,ご執筆頂いた各著者に深謝申し上げるとともに,化学療法を専門としないまでも,その必要性と意欲をもつ医師にとって日常診療の参考になることを期待して序文としたい.
目 次
第I部.総 論
第1章 化学療法の効果判定
  • I.腫瘍縮小効果判定規準
    • 1.WHOガイドライン
    • 2.癌取り扱い規約
    • 3.RECISTガイドライン
  • II.日本における治療効果判定法の現況
    • 1.食 道
    • 2.胃
    • 3.大 腸
    • 4.肝 臓
    • 5.胆 道
    • 6.膵 臓
  • III.考 察
  • IV.今後の展望
第2章 薬剤耐性の機序
  • I.薬剤耐性に関与するABCトランスポーター
    • 1.P糖蛋白質
    • 2.MRP1
    • 3.BCRP
  • II.アポトーシス
  • III.PI3K-AktとNFκB生存シグナル経路と化学治療
  • IV.DNAマイクロアレイを用いた耐性の研究
  • V.遺伝子多型と抗癌剤感受性
  • VI.耐性の克服
第3章 抗癌剤感受性試験の意義
  • I.感受性試験の方法
  • II.臨床効果との一致程度
  • III.現時点での臨床応用---標準的治療との対比
  • IV.分子生物学的抗癌剤感受性試験---5-FUの分子標的について
  • >V.今後の展望
第4章 消化器がんにおける分子標的治療
  • I.分子標的治療の定義と分類
  • II.分子標的薬の概要
    • 1.チロシンキナーゼ阻害剤および増殖因子受容体に対するモノクローナル抗体
    • 2.シグナル伝達阻害剤
    • 3.プロテアソーム阻害剤
    • 4.ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
    • 5.Matrix Metalloproteinase(MMP)阻害剤
    • 6.シクロオキシゲナーゼ2(COX2)阻害剤
    • 7.サリドマイド Thalidomide
    • 8.血管新生阻害剤
第5章 副作用とその対策
  • I.副作用のGrading
  • II.白血球減少(好中球減少)と感染
    • 1.好中球減少時の対策
  • III.貧 血
  • IV.血小板減少
  • V.脱 毛
  • VI.肺 障 害
    • 1.診 断
    • 2.治 療
  • VII.神経障害
    • 1.Cisplatin
    • 2.Oxaliplatin
    • 3.Paclitaxel
  • VIII.皮膚障害
    • 1.Hand-foot syndrome(手足症候群)
    • 2.色素沈着
  • IX.血管外漏出
    • 1.予 防
    • 2.発生後の対策
  • X.口 内 炎
    • 1.引き起こしやすい薬剤
    • 2.経 過
    • 3.予 防
    • 4.発生後の対策
    • 5.疼痛対策
  • XI.悪心・嘔吐
    • 1.悪心・嘔吐の出現時期による分類
    • 2.対 策
  • XII.下 痢
    • 1.問題となるおもな抗癌剤
    • 2.経 過
    • 3.対 策
    • 4.CPT-11投与時の下痢対策
  • XIII.過 敏 症
第6章 外来化学療法
  • I.外来化学療法加算
  • II.外来で行えるレジメン
  • III.どのように患者を選ぶか
  • IV.どこで外来化学療法を行うか(デイケアセンター)
  • V.外来化学療法の実際---安全確保も含め
    • 1.前日までに
    • 2.診察の場で
    • 3.デイケアセンターで
    • 4.デイケアセンター・ベッドサイドで
  • VI.外来で行う大腸癌化学療法
第7章 化学療法のリスクマネジメント
  • I.化学療法によって起こりうる医療事故
  • II.化学療法による医療事故を防止するための対策
    • 1.医療従事者に対する教育・資格認定制度
    • 2.投与量,投与間隔,投与経路などの確認
    • 3.患者教育
    • 4.コミュニケーションの向上
  • III.癌化学療法のクリニカルパス
第8章 腎障害・肝障害時の化学療法
  • I.薬物動態と薬力学
  • II.腎障害時の抗癌剤治療
  • III.肝障害時の抗癌剤治療
第II部.各 論
第1章 注目される抗癌剤
  • (1) S-1
  • I.S-1の組成
  • II.S-1の投与方法
  • III.各臓器における効果
    • 1.胃 癌
    • 2.大腸癌
    • 3.膵臓癌
    • 4.その他
  • (2) CPT-11
  • I.CPT-11の作用機序
  • II.CPT-11の代謝
  • III.非臨床試験
  • IV.臨床応用
    • 1.大腸癌
    • 2.胃 癌
  • V.CPT-11の有害事象とその対策
  • (3) タキサン系薬剤
  • I.胃癌におけるタキサン系薬剤
    • 1.単剤療法
    • 2.併用療法
  • II.食道癌におけるタキサン系薬剤
  • (4) Capecitabine
  • I.Capecitabineの薬理学的特性
  • II.Capecitabineの第I相試験
    • 1.日本における第I相試験
    • 2.海外における第I相試験
  • III.大 腸 癌
    • 1.国内における第II相試験
    • 2.海外における第II相および第III相試験
    • 3.現状および今後
  • IV.胃 癌
    • 1.国内における臨床試験成績
    • 2.海外における臨床試験成績
  • V.膵 癌
  • (5) Oxaliplatin
  • I.薬効薬理
  • II.薬物動態
  • III.海外における臨床試験の成績
    • 1.大腸癌
    • 2.膵 癌
    • 3.胃 癌
  • IV.日本における臨床試験の成績
  • V.毒性とその対策
    • 1.神経毒性
    • 2.血液毒性
    • 3.アレルギー反応
    • 4.腎毒性
第2章 食道癌に対する化学療法
  • I.CRTおよび化学療法の投与例
  • II.Stage I
  • III.Stage II・III
    • 1. EMRされたm3, sm1癌
    • 2. EMRされたsm癌(sm2~3)>
    • 3. EMR不可能なsm癌
    • 1. 術前化学療法(Neoadjuvant chemotherapy)
    • 2. 術前化学放射線療法(Neoadjuvant chemoradiotherapy)
    • 3. 術後化学療法(Adjuvant chemotherapy)
    • 4. 根治的化学放射線療法
  • IV.日本における臨床試験の成績
  • IV.進行・再発食道癌
    • 1.FP療法
    • 2.nedaplatin+5-FU
    • 3.docetaxel,paclitaxel
  • V.CRTおよび化学療法施行時の注意
    • 1. 血液毒性
    • 2. 口内炎,咽頭炎,食道炎に伴う嚥下困難
    • 3. CDDP
    • 4. 放射線による毒性
  • VI.今後の展望
第3章 胃癌化学療法
  • I.海外における進行胃癌化学療法の現状
  • II.本邦における現況
    • 1.単剤での成錬
    • 2.併用療法の成績
第4章 大腸癌に対する化学療法
  • I.切除不能進行・再発大腸癌の化学療法の役割
  • II.切除不能・再発大腸癌に対する抗癌剤治療
    • 1.5-fluorouracil(5-FU)
    • 2.Irrinotecan(CPT-11)
    • 3.Oxaliplatin(L-OHP)
    • 4.分子標的治療薬
    • 5.経口フッ化ピリミジン製剤
第5章 胃癌,大腸癌の術後補助化学療法
  • I.胃癌の術後化学療法
    • 1.欧米における胃癌補助化学療法の“global”standard
    • 2.日本における胃癌術後化学療法の“Japanese”standard
  • II.大腸癌の術後化学療法
    • 1.大腸癌補助化学療法の“global”standard
    • 2.大腸癌補助化学療法の“Japanese”standard
第6章 膵・胆道癌に対する化学療法
  • I.膵・胆道癌における全身化学療法の意義
  • II.膵 癌
    • 1.全身化学療法の現状
    • 2.全身化学療法の適応
  • III.胆 道 癌
第7章 肝細胞癌に対する化学療法
  • I.肝癌に対する化学療法の適応
  • II.肝動脈塞栓化学療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)
    • 1.投与方法
    • 2.奏効率
    • 3.副作用とその対処
  • III.スマンクス動注療法(styrene maleic acid neocarzinostatin;SMANCS)
    • 1.投与方法
    • 2.奏効率
    • 3.副作用とその対処
  • IV.白金製剤動注療法(1回動注)
    • 1.投与方法
    • 2.奏効率
    • 3.副作用とその対処
  • V.低用量CDDP+5FU併用持続動注療法
    • 1.投与方法
    • 2.奏効率
  • VI.インターフェロン+5FU動注療法
    • 1.投与方法
    • 2.奏効率
第8章 転移性肝癌に対する化学療法
  • I.肝動注化学療法
    • 1.理論的背景
    • 2.適 応
    • 3.レジメン
    • 4.治療効果
  • II.全身化学療法
  • III.今後の展望;QOLに配慮した再発大腸癌治療
第9章 消化管悪性リンパ腫に対する化学療法
  • I.MALT lymphoma
    • 1.H.pylori除菌治療
    • 2.rituximabによる治療
    • 3.外科治療
  • II.Follicular lymphoma
  • III.Diffuse large Bcell lymphoma(DLBCL)
  • IV.その他のリンパ腫
第10章 GISTに対する化学療法
  • I.概 要
    • 1.Gastrointestinal Stromal Tumor(GIST)
    • 2.Imatinibの開発
    • 3.Imatinib治療の成績
  • II.治療上の注意点
    • 1.適 応
    • 2.投与方法
    • 3.投与期間
    • 4.治療効果判定
  • IV.副作用と対処法
  • V.耐性の発生と克服
抗癌剤投与例
索 引