判例に学ぶ 消化器医療のリスクマネジメント

  • 【著】 日山 亨/日山 恵美/吉原 正治/田中 信治
  • 【ISBN】 4-88875-170-6
  • 【本体価格】 4,200円
  • 【刊行年月】 2005年 04月
  • 【版組】 B5判
  • 【ページ数】 187ページ
  • 【在庫】 なし

判決から学ぶことは非常に多くのものがある.どのような事例が訴訟に至り,患者は何を訴えてきているのか,それに対して裁判所はどのように判断したのか,ということを私たちは十分に理解しておくべきであろう.というのも,判決で打ち出されている姿勢は,社会の医療に対する期待や医療従事者の従うべき行為規範を示しているからである.
目 次
第1章 医療事故・医療訴訟の現状
1. 「医事紛争」,「医療事故」,「医療過誤」
2. 医事紛争の件数
3. 医療事故訴訟の件数
4. 消化器疾患が関係した医療事故の実態
第2章 検査・治療手技に関する訴訟事例
1. 便潜血反応検査
  • 【裁判例】便潜血反応検査を含む人間ドック後に,大腸癌にて死亡した事例
2. 消化管内視鏡検査・治療
  • (1)上部消化管(胃)内視鏡検査・治療
  • 【裁判例】基準量を大幅に超えた前処置の局所麻酔剤投与後に,急死した事例
  • 【裁判例】前投薬薬剤によるアナフィラキシーショックで死亡した事例
  • 【裁判例】前投薬として睡眠導入剤の使用により,交通事故を起こした事例
  • 【裁判例】抗血小板剤を内服していた患者が,胃生検後に大量出血を来した事例
  • 【裁判例】内視鏡的異物除去術試行後に,緊急開腹手術となった事例
  • (2)大腸内視鏡検査・治療
  • 【裁判例】大腸内視鏡検査中に,腸管穿孔を生じた事例
  • 【裁判例】腹膜炎の既往のある患者の大腸内視鏡検査中に,腸管穿孔を生じた事例
  • 【裁判例】大腸内視鏡的ポリペクトミー後に,穿孔による腹膜炎を来した事例
  • (3)腹腔鏡検査
  • 【裁判例】腹腔鏡検査中に循環不全・呼吸不全を起こし,低酸素脳症に陥った事例
3. 消化管X線検査
  • (1)胃X線検査
  • 【裁判例】胃X線検査を含む健康診断受診後に,胃癌にて死亡した事例
  • (2)注腸X線検査
  • 【裁判例】注腸X線検査で異常なしとされたが,その後大腸癌で死亡した事例
  • 【裁判例】注腸X線検査で異常陰影を認めたものの精査の指示がなされず,直腸癌で死亡した事例
4. 内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)・内視鏡的乳頭切開術(EST)
  • 【裁判例】ERCPおよびEST後に,重症急性膵炎を発症し死亡した事例
  • 【裁判例】ERCPにより十二指腸穿孔を生じ,急性汎発性腹膜炎で死亡した事例
5. 食道胃静脈瘤塞栓術
  • 【裁判例】食道胃静脈瘤に対して塞栓術を施行中,心停止を来たし死亡した事例
6. 肝動脈塞栓術(TAE)・肝動脈内抗癌剤注入術(TAI)
  • 【裁判例】肝癌治療のため,TAEとTAIを受けた後,出血性胃潰瘍で死亡した事例
第3章 消化器疾患に関する訴訟事例
1. 食道
  • 【裁判例】潰瘍性大腸炎に併発した食道カンジダ症に対しファンギゾンを投与したところ,急死した事例
  • 【裁判例】食道癌の診断の遅れが問題とされた事例
2. 胃
  • 【裁判例】胃潰瘍と診断・治療されていた患者が,胃癌にて死亡した事例
  • 【裁判例】スキルス胃癌の見落としが問題とされた事例
  • 【裁判例】入院当初膀胱後部に腫瘍があり,自死後,スキルス胃癌の転移と判明した事例
3. 腸
  • 【裁判例】医師が適切な指示・説明を怠り,急性虫垂炎の診断・治療が遅れたとされた事例
  • 【裁判例】急性腹痛の患者の診療内容が問題とされた事例
  • 【裁判例】下腹部痛を訴えた高齢者が診察後に急死,剖検にて急性虫垂炎と診断された事例
  • 【裁判例】糞便性イレウスから腸管壊死・穿孔を来たし,死亡した事例
  • 【裁判例】潰瘍性大腸炎の患者が中毒性巨大結腸症を発症し,死亡した事例
4. 肝
  • 【裁判例】脳血管障害に対する薬剤により,薬剤性肝炎を生じた事例
  • 【裁判例】血液検査でC型肝炎ウイルス(HCV)が陽性であったため,腹腔鏡検査等を施行したが,その後,当初からHCVは陰性であったと判明した事例
  • 【裁判例】急性肝炎で入院加療中,肝炎が劇症化し死亡した事例
  • 【裁判例】自己免疫性肝炎(AIH)と原発性胆汁性肝硬変(PBC)の混合型の治療にステロイドを投与し,大腿骨頭壊死を発症した事例
  • 【裁判例】肝硬変の治療中,食道静脈瘤の破裂により死亡した事例
  • 【裁判例】肝硬変・食道静脈瘤の加療のため入院した翌日に死亡した事例
  • 【裁判例】肝硬変の患者に,肝癌を早期に発見するための検査を実施せず,肝癌で死亡した事例
  • 【裁判例】慢性肝炎で加療中,肝硬変・肝癌で死亡した事例
  • 【裁判例】外来通院中,肝臓腫瘍の疑いがありながら精査されず,肝内胆管癌で死亡した事例
  • 【裁判例】転移性肝癌と告知し抗癌剤による治療を行なった後,その腫瘍が良性と判明した事例
5. 胆嚢
  • 【裁判例】胆管癌の再発に対し,化学療法を行わなかったことが問題とされた事例
  • 【裁判例】初めて診察する胆嚢進行癌の疑いのある患者に,重度の胆石症と説明したことが問題とされた事例
6. 膵
  • 【裁判例】急性腹症および過換気症候群と診断された患者が,急性出血性膵炎で死亡した事例
  • 【裁判例】過敏性腸症候群と診断され治療を受けていたが,膵癌にて死亡した事例
7. その他
  • 【裁判例】IVH施行中にウエルニッケ脳症を発症した事例
第4章 消化器症状に関する訴訟事例
  • 【裁判例】腹痛,悪心を訴えた患者が,糖尿病性昏睡で死亡した事例
  • 【裁判例】発熱,嘔吐を訴えた患者の,適切な医療機関への転送時期が問題となった事例
  • 【裁判例】腹痛を訴えた患者が,外来診察の翌日急死した事例
  • 【裁判例】嘔吐および発熱に対する投薬後,自室アパートで死亡していた事例
  • 【裁判例】腹痛の確定診断に至らず,長時間痛みを味あわせたことに対する損害賠償が請求された事例
  • 【裁判例】腹痛,血便等の精査のための入院中,致死性不整脈で急死した事例
第5章 消化器以外のありふれた症状に関する訴訟事例
  • 【裁判例】感冒症状の後,急性心不全で死亡した事例
  • 【裁判例】感冒に対する投薬により顆粒球減少症を来たし,死亡した事例
  • 【裁判例】急性扁桃腺炎として加療していた患者が強い呼吸困難を訴え,その後呼吸停止を来した事例
  • 【裁判例】左肩部痛を訴えた患者が,外来診察翌日に急死した事例
第6章 救命措置に関する訴訟事例
  • 【裁判例】点滴終了後急変した患者に対する救命措置が問題とされた事例
  • 【裁判例】急性咽頭炎に対する点滴中,急死した事例
  • 【裁判例】肺塞栓症の診断時期が問題とされた事例
第7章 医療一般に関する訴訟事例
1. 採血・注射
  • 【裁判例】手首からの採血時に橈骨神経損傷が生じた事例
2. 輸血
  • 【裁判例】不適合輸血が問題とされた事例
3. 中心静脈穿刺
  • 【裁判例】鎖骨下静脈穿刺後,ショック状態となり死亡した事例
4. 高圧酸素療法
  • 【裁判例】点滴を施行ながら高圧酸素療法を受けていた患者が急変し,中枢神経障害の後遺症を負った事例
5. 病院内での転倒
  • 【裁判例】検査目的で入院していた患者が転倒し,左大腿骨頚部骨折の傷害を負った事例
第8章 臨床試験・先端的(新規)治療法に関する訴訟事例
  • 【裁判例】臨床試験参加のインフォームド・コンセントの有無が問題とされた事例
  • 【裁判例】子宮内膜癌患者が研究段階であった抗癌剤併用投与により骨髄抑制を来たし,死亡した事例
第9章 医師に対する刑事責任・医師法違反
  • 【裁判例】医師の異状死の届け出の遅れが医師法違反に問われた事例
第10章 医師の説明に対する期待と法的医療水準 ?医師の説明には「透明性」を?
第11章 広島大学病院における訴訟事例検討の取り組み