新薬も含め実地臨床に必要なup-to-dateの知識を解説


消化器がん化学療法 2004

  • 【編集】 市倉 隆
  • 【ISBN】 4-88875-157-9
  • 【本体価格】 4,200円
  • 【刊行年月】 2004年 04月
  • 【版組】 B5
  • 【ページ数】 255ページ
  • 【在庫】 なし

序文より
従来より消化器癌の治療では外科的切除が第一選択であり、化学療法は切除不能進行癌・再発癌に対し、あるいは術前・術後の補助療法として行われる脇役的な存在であったが、近年新たな薬剤の登場や併用療法の進歩に伴い化学療法の効果が注目されている。早期診断が進歩したといいながらも進行癌で発見される症例は決して少なくなく、また根治切除例数に比例して補助化学療法適応例や再発例が発生してくるため、化学療法の対象となる症例はきわめて多い。
化学療法の効果を評価する際にもっとも重要なend pointは生存期間である。進行・再発癌に対する化学療法に関し、胃癌や大腸癌では大規模なstudyにより生存期間でのbest supportive careに対する優位性が示された。膵癌でもgemcitabinによる延命効果が報告されている。術後補助化学療法については大腸癌でその有効性が示され、胃癌・食道癌でもevidenceは不十分ながら有効な可能性が示唆されている。
消化器癌の化学療法ではこれまで5-FUが中心的役割を担ってきた。leukovorin, methotrexate, cisplatinなどとの併用によるbiochemical modulationや、各種抗癌剤との併用療法が試みられ大いに注目されたが、必ずしも十分な成績が得られたとは言い難い。最近のS-1, irinotecan (CPT-11), taxan等の登場により新たな展開が期待される。
消化管原発の悪性リンパ腫では従来外科手術が選択されることが多かったが、近年では化学療法あるいは化学療法+放射線照射が標準治療になりつつある。食道癌でも放射線化学療法により外科切除にも匹敵する遠隔成績が得られたとの報告以来、にわかに同治療が注目を集め、ガイドラインにも通常行われている治療として記載記されている。
癌治療における21世紀の大きな目標として分子標的治療に関する研究が精力的に進められ、肺癌、乳癌、白血病などでは臨床応用されている。消化器領域でも間葉系腫瘍GISTの多くで発現するチロシンキナーゼ(c-Kit)を標的としたimatinibの有効性が示された。
化学療法は本来、十分な知識と経験をもった専門医のもとで行われるべきであるが、一部の癌治療専門施設を除いて、診断学を専門とする内科医が検査の傍らで、あるいは外科医が手術の傍らで化学療法に携わっているケースが少なくないのが現状と思われる。そこで化学療法を専門としない医師が実地臨床で必要なup-to-dateの知識を得られるような消化器がん化学療法に関するハンドブックとして本書を企画した。新薬や新たな併用療法の臨床試験が次々に進行していくことが予想され、可能な限り短期間での改訂を期して序文としたい。

市倉 隆
目 次
第Ⅰ部 総 論
1.化学療法の効果判定法
    • 臨床的治療の効果/奏効率および生存期間/薬物有害反応/RECISTについて
2.薬剤耐性の機構
    • さまざまな耐性の機構/膜輸送蛋白質/DNAマイクロアレイを用いた耐性の研究/SNPs,突然変異と抗癌剤感受性
3.抗癌剤感受性試験の意義
    • おもな抗癌剤感受性試験法/胃癌化学療法の現況/In vitro抗癌剤感受性判定の臨床相関/抗癌剤感受性試験の有用性の検証の必要性
4.消化器がんの分子標的治療
    • 血管新生阻害薬/シクロオキシゲナーゼ阻害薬/プロテアーゼ阻害薬/チロシンキナーゼ阻害剤
5.Tumor dormancy therapy
    • 化学療法としてのtumor dormancy therapy(TDT)とは?/TDTに合致した濃度設定法(投与方法) /毒性グレード1/2を指標とするtailored dose化学療法/iMRD治療の実際/MTDとiMRDの比較/血管新生抑制剤との
6.がん化学療法の副作用対策
    • 副作用の発現時期/悪心・嘔吐/下痢/口内炎/神経障害/腎障害/骨髄抑制/浮腫/血管外漏出/肺毒性/心毒性
第Ⅱ部 各 論
1.注目される抗癌剤
  • (1)TS-1
    • TS-1の作用機序/胃癌におけるTS-1の臨床試験成績/TS-1の併用療法/その他の消化器癌に対するTS-1の効果
  • (2)CPT-11(塩酸イリノテカン)
    • CPT-11の薬理学的特性/消化器癌におけるCTP-11の位置づけと臨床成績/CPT-11の注意すべき有害反応
  • (3)タキサン系薬剤
    • パクリタキセル/ドセタキセル
  • (4)カペシタビン
    • カペシタビンの腫瘍選択性と5-FUへの変換機序/胃癌/大腸癌
2.食道癌に対する化学療法
    • ステージI/ステージII/III(T4を除く/ステージIII(T4)/Iva
3. 胃癌に対する化学療法
    • 胃癌化学療法の生存期間延長への寄与/第1選択の化学療法/国内で行われている胃癌の化学療法
4.大腸癌に対する化学療法
    • 化学療法の実際と効果/転移性大腸癌に対する標準的治療法/転移性大腸癌に対する新規抗癌剤/術後補助化学療法/肝動注化学療法
5.膵・胆道癌に対する化学療法
    • 膵癌に対する化学療法/胆道・胆管癌に対する化学療法
6.肝細胞癌の化学療法
    • 肝細胞癌治療のアルゴリズムからみた化学療法の位置づけ/腫瘍動脈化学塞栓術(TACE/Chemolipiodolization/動注化学療法/経口抗癌剤による化学療法
7.転移性肝癌に対する動注化学療法
    • 背景/肝動注化学療法の適応/治療の実際/有害事象
8.消化管悪性リンパ腫に対する化学療法
    • 診断とステージング/各論(MALT lymphoma/びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療/Mantle cell lymphoma)
9.GISTに対する化学療法
    • GIST/推奨されるレジメン/イマチニブ