消化器CT・MRI 読み方,考え方

  • 【【編著】】 大友 邦(東京大学大学院医学系研究科放射線診断学)
  • 【ISBN】 4-88875-154-4
  • 【本体価格】 3,600円
  • 【刊行年月】 2003年 11月
  • 【版組】 B5判 並製
  • 【ページ数】 167ページ
  • 【在庫】 なし

序 文
核磁気共鳴現象の画像化,すなわちMRIを基本原理の開発した功績により,米国Illinois大学のPaul Lauterbur教授と英国Nottingham大学のPeter Mansfield名誉教授に2003年のノーベル医学・生理学賞が贈られたことは記憶に新しい.また24年前の1979年にはX線CTを開発したA.M.CormackとG.N.Hounsfieldの2人がノーベル医学・生理学賞を授賞している.このことは,断層撮影法としてのCTとMRIが臨床医学に与えたインパクトの大きさを物語っている.
X線CTの第一の長所は,すぐれた空間分解能により解剖学的に詳細な情報が得られる点にある.また造影剤の急速静注を併用したダイナミックCTにより血行動態の解析が可能であり,最近はマルチスライスCTにより,「より広く,より速く,より薄く」画像を得ることができるようになっている.
一方,MRIの最大の長所である高いコントラスト分解能は,腫瘤性病変の鑑別診断や,非侵襲的に胆管と膵管を描出できるMRCPで有用性を発揮している.
本書は,雑誌『臨牀消化器内科』に1999年から2年にわたって連載された「消化器CTの読み方」と「消化器MRIの読み方」のシリーズをまとめて正常像等を加え,改変・書籍化したものである.それぞれの章では,検査法とともに消化器領域のおもな疾患のCTおよびMR所見をその病理・組織学的背景に基づいて解説することに主眼がおかれている.またわれわれの経験にもとに二つの検査法をいかに活用していけばよいかについて,わかりやすく示すように努力した.
本書を通じて消化器領域の臨床に係わる方々がCTおよびMRI診断の基本と活用法を習得し,日々の臨床に応用されることを祈念している.

2003年10月 東京大学大学院医学系研究科放射線診断学 大友邦
目 次
序章 CT・MRI検査の適応と選択 / 岡田吉隆
1.空間分解能
2.病変部のコントラスト
3.断層面の方向
4.特殊な検査法
■第1章 消化器CTの読み方,考え方
1.CTの原理と読影の基礎 / 岡田吉隆
  • I.CT画像の基礎
    • 1.CT画像の表すもの
    • 2.CT画像所見の表現法
    • 3.正常組織のCT値
    • 4.アーチファクト
  • II.CTの撮影法の進歩
    • 1.ヘリカルCT
    • 2.マルチスライスCT
  • III.消化器CTにおける造影剤
    • 1.CT検査に用いられる造影剤
    • 2.投与法と撮影のタイミング
    • 3.経口造影剤
2.消化器の正常CT像 / 渡辺 慎
  • I.肝臓
    • 1.位置・性状
    • 2.区域解剖
  • II.胆道系
  • III.膵
  • IV.消化管
3.びまん性肝疾患 / 国松 聡,岡田吉隆,大友 邦
  • ●読影のアプローチ・ポイント
    • 1.肝の形態変化をきたす疾患
    • 2.肝の吸収値変化をきたす疾患
    • 3.肝内脈管描出異常を伴う疾患
4.肝良性腫瘍・腫瘍類似疾患 / 八尾由紀,岡田吉隆,大友 邦
  • I.肝嚢胞
  • II.肝血管腫
  • III.肝膿瘍
  • IV.限局性結節性過形成
  • V.肝腺腫
  • VI.肝血管筋脂肪腫
5.肝細胞癌 / 桐生 茂,岡田吉隆,大友 邦
  • I.検査法
  • II.画像所見
    • 1.結節型肝細胞癌
    • 2.塊状型肝細胞癌
    • 3.びまん型肝細胞癌
    • 4.前癌病変から高分化肝細胞癌
    • 5.特殊な肝細胞癌
      • 1)硬化型肝細胞癌 2)肉腫様変性 3)血管浸潤 4)肝外転移
6.その他の肝悪性腫瘍 / 小松秀平,大友 邦
  • I.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
  • II.biliary cystadenoma,cystadenocarcinoma
  • III.転移性肝腫瘍
  • IV.まれな肝原発悪性腫瘍
  • V.小児の肝悪性腫瘍
7.胆嚢・胆管 / 国松 聡,岡田吉隆,大友 邦
  • I.正常解剖・検査法
  • II.症例呈示
    • 1.胆石,胆嚢炎
    • 2.胆嚢癌
    • 3.胆嚢腺筋腫症(アデノミオマトーシス)
    • 4.胆管癌
8.膵炎 / 桐生 茂,岡田吉隆,大友 邦
  • I.急性膵炎
  • II.慢性膵炎
  • III.膵炎の合併症
  • IV.腫瘤形成性膵炎
  • V.groove pancreatitis
  • VI.自己免疫性膵炎
9.膵腫瘍 / 大友 邦>
  • I.造影早期に染まり抜けとなる充実性腫瘍―膵管癌
  • II.造影早期に濃染する充実性腫瘍―膵島細胞腫
  • III.嚢胞性腫瘍
    • 1.粘液性嚢胞腺腫・腺癌
    • 2.膵管内乳頭腫瘍
    • 3.漿液性嚢胞腺腫
    • 4.solid and cystic tumor(SCT)
10.脾・門脈 / 国松 聡,岡田吉隆,大友 邦
  • I.正常像
  • II.症例呈示
    • 1.脾嚢胞性病変
    • 2.脾充実性腫瘤
    • 3.脾腫,脾梗塞
    • 4.門脈閉塞症
11.食道・胃 / 森 墾,大友 邦
  • I.検査法
  • II.正常CT解剖
  • III.食道病変
    • 1.食道癌
    • 2.食道癌以外の食道病変
  • IV.胃病変
    • 1.胃癌
    • 2.胃癌以外の胃病変
12.小腸 / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.正常解剖
    • 1.十二指腸
    • 2.空腸・回腸
  • II.先天異常
    • 1.腸回転異常
    • 2.腸管重複嚢腫
  • III.腫瘍
  • IV.炎症
  • V.イレウス
13.大腸・虫垂 / 桐生 茂,大友 邦
  • I.検査法
  • II.虫垂
    • 1.正常解剖
    • 2.炎症性疾患
      • ●虫垂炎
    • 3.腫瘍性病変
      • 1)虫垂粘液瘤 2)その他の腫瘍性病変
  • III.大腸
    • 1.正常解剖
    • 2.炎症性疾患
      • 1)憩室炎 2)炎症性腸疾患
    • 3.腫瘍性病変
      • ●大腸癌
14.最近のCTの進歩 / 赤羽正章,岡田吉隆,大友 邦
  • I.検出器とデータ収集の多列化
    • 1.マルチスライスCTのもたらす恩恵
    • 2.マルチスライスCTの臨床的意義
  • II.管球回転速度向上
  • III.再構成アルゴリズムの進化
  • IV.進化したCTの抱える問題点
■第2章 消化器MRIの読み方,考え方
1.MRIの原理と読影の基礎 / 岡田吉隆
  • I.MRIの原理
    • 1.MRIは何を見ているのか
    • 2.MRIでは何を行っているか
    • 3.T1,T2とは何か
    • 4.T1強調画像・T2強調画像とはどういうものか
  • II.MRI検査時の注意点
  • III.読影の基礎―組織成分と信号強度の関係
    • 1.水
    • 2.脂肪
    • 3.出血
    • 4.鉄
    • 5.線維組織
    • 6.血流
2.消化器の正常MRI像 / 渡辺 慎
3.肝MRI総論,びまん性肝疾患 / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.肝MRI総論
    • 1.主要な撮像法
      • 1)スピンエコー法 2)高速スピンエコー法 3)グラディエントエコー法
    • 2.MRIに用いられる造影剤
      • 1)ガドリニウム造影剤 2)超常磁性体酸化鉄造影剤
  • II.びまん性肝疾患
    • 1.脂肪肝
    • 2.肝硬変
    • 3.鉄過剰症
4.肝良性腫瘍 / 赤羽正章,岡田吉隆,大友 邦
  • I.上皮性腫瘍
    • 1.肝細胞腺腫
      • 1)典型像 2)非典型像
    • 2.肝内胆管嚢胞腺腫
  • II.非上皮性腫瘍
    • 1.海綿状血管腫
    • 2.脂肪腫,骨髄脂肪腫,血管筋脂肪腫
  • III.腫瘍類似病変,非腫瘍性病変
    • 1.胆管性過誤腫
    • 2.限局性結節性過形成
    • 3.代償性肝葉過形成
    • 4.肝嚢胞
    • 5.前腸性肝嚢胞
5.肝細胞癌 / 桐生 茂,岡田吉隆
  • I.各撮像法における肝細胞癌の信号
    • 1.T1強調画像
    • 2.T2強調画像
    • 3.ダイナミックスタディ
  • II.症例呈示
    • 【症例1】結節型肝細胞癌
    • 【症例2】びまん型肝細胞癌
    • 【症例3】門脈腫瘍塞栓
  • III.肝特異性造影剤
    • ●フェリデックス使用例
6.肝細胞癌(非典型例) / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.良・悪性境界領域の結節病変
    • 1.組織学的分類
    • 2.信号強度の特徴
    • 3.造影による診断
      • 1)細胞外液分布性造影剤(ガドリニウム製剤)による造影 2)網内系分布性造影剤による造影
  • II.特殊な型の肝細胞癌
    • 1.脂肪変性
    • 2.偽腺管構造の多い肝細胞癌
    • 3.肝細胞癌の胆管内進展
7.肝悪性腫瘍-肝細胞癌以外の原発性悪性腫瘍 / 大友 邦,岡田吉隆
  • I.胆管細胞癌
  • II.biliary cystadenoma and cystadenocarcinoma
  • III.まれな原発腫瘍
    • 1.上皮様血管内皮腫
    • 2.カルチノイド
    • 3.血管肉腫
    • 4.未分化肉腫
    • 5.その他の腫瘍
8.転移性肝癌 / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.肝転移の診断にMRIは必要か
  • II.転移性肝癌のMRI所見
    • 1.造影前のMRIにおける所見
    • 2.造影MRI(ガドリニウム製剤)における所見
    • 3.肝特異性造影剤を用いたMRIにおける所見
9.MRCPの原理,胆嚢・胆道 / 赤羽正章,岡田吉隆,大友 邦
  • I.MRCPの原理
  • II.前処置
  • III.読影上の注意
  • IV.静注・直接造影法との比較
  • V.適応
10.膵炎・膵癌のMRI / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.膵の画像診断におけるMRIの位置づけ
  • II.正常膵のMRI像
  • III.急性膵炎
  • IV.慢性膵炎
  • V.膵癌
  • VI.膵内分泌性腫瘍
11.膵嚢胞性腫瘍 / 大友 邦,岡田吉隆
  • I.画像診断における膵嚢胞性腫瘍(腫瘤)とは
  • II.嚢胞性腫瘍の鑑別診断におけるMRIの一般的有用性
    • 1.液体の検出
    • 2.液体の性状診断
    • 3.内部構造の描出
    • 4.充実性成分の濃染の有無
  • III.膵嚢胞性腫瘍の画像診断
    • 1.粘液産生膵腫瘍
      • 1)最近の分類 2)MCT 3)IMPT
    • 2.漿液性嚢胞腺腫
    • 3.SCT(別称:solid and papillary epithelial neoplasm)
    • 4.島細胞腫
    • 5.その他
  • IV.画像による鑑別診断の限界
12.脾臓・血管 / 岡田吉隆,大友 邦
  • I.脾臓
    • 1.正常の脾臓のMRI像
    • 2.副脾
    • 3.脾腫
    • 4.脾臓の腫瘍
  • II.血管
    • 1.血流によるMRI像の変化
    • 2.血管が黒くぬける場合
    • 3.血管が白く光る場合
    • 4.拍動によるアーチファクト
    • 5.MRAの方法
13.消化管 / 桐生 茂,岡田吉隆,大友 邦
  • I.消化管領域のMRIの特徴
  • II.胃癌
  • III.大腸癌