大腸内視鏡検査のベテランの方々に種々の観点から,挿入手技のコツを披露して戴いた


大腸内視鏡 挿入手技の基本

  • 【【企画編集】】 臨牀消化器内科編集委員会
  • 【ISBN】 4-88875-148-X
  • 【本体価格】 4,600円
  • 【刊行年月】 2003年 03月
  • 【版組】 B5判
  • 【ページ数】 130ページ
  • 【在庫】 なし

序 文
近年大腸疾患の増加はきわめて著明である.かつては日本には非常にまれであった潰瘍性大腸炎にしても現在ではありふれた疾患となっており,さらに日本に本当にあるのかどうか,日本でいうクローン病はみな結核ではないのかとまでいわれ,その存在が疑問視されていたクローン病にしても,今や日常しばしば目にする疾患の一つになっている.また大腸癌の増加も著しく,今や胃癌以上の頻度で日常臨床で見かける疾患となっており,大腸ポリープに至っては,内視鏡検査を行えば,それこそ数人に1人の頻度で見つかる程ポピュラーな疾患になってきている.
当然消化管内視鏡に携わる人々の関心は,上部消化管から次第に大腸の内視鏡検査に向けられるようになって,大腸内視鏡検査の施行件数は各施設とも飛躍的に伸びており,施設によっては,上部消化管内視鏡検査より,むしろ多くなっているのが現状である.
しかし大腸内視鏡検査は上部消化管のそれと違って,その実施が難しいのもまた事実である.多くの方が自己流で始められて,観察以前にまず深部挿入に難渋され,またなんとか深部挿入が出来たとしても非常に時間がかかり,被検者は大きい苦痛を味わわされているというのも,また偽らざる現実の姿である.
この様な背景のもと,なんとか大腸内視鏡検査の手技,とくにまず深部挿入の手技を十分身につけたいという希望を持たれる方々は非常に多く,たとえば日本消化器内視鏡学会で行っている重点卒後教育セミナーにしても,大腸内視鏡に関連したテーマを希望される方が非常に多く,事実挿入方法を主題にしたセミナーは,毎回他のテーマに比べはるかに多くの受講者を集めており,内視鏡医諸家の関心の高さを裏付けている.
なんとか容易に大腸内視鏡検査のテクニックを身につけたいというのが多くの方々の偽らざる要望であろう.
本書は,これらの方々を対象に,大腸内視鏡検査のベテランの方々に種々の観点から,そのコツを披露して戴いたものである.
本書の内容は,かつて『臨牀消化器内科』に特集として載せたものをもとに,諸家の要望に応える目的で再編集し,必要事項を新たに加筆し,インフォームド・コンセント,前処置などの項目は省き,とくに挿入手技に重点をおいてまとめてみた.
内容は検査に必要な解剖学的事項から始めて,硬いスコープ,軟らかいスコープ,硬度可変スコープなど機器別に,初心者の為の方法,大腸の部位別の挿入の基本操作,合理的な機器の捻り操作,短縮操作,アングル操作等々を各執筆者の長年の経験に基づいてわかり易く解説して戴いた.同一項目であっても,それぞれの方が,違った立場で書かれているので,読者は該当項目を読み比べることで,疑問点の解決が得られ,即自己の検査に応用出来るものと思っている.
また案外問題になるのが,1日当たりの検査件数が増えるにしたがって増強してくる術者の手の痛み,疲労である.今後ますます検査件数が増えていくことを考えると,この問題は決して無視し得ない.これらの問題を解決する為の方法として,術者の疲労の少ない,術者に優しい安定した姿勢で出来る方法についても詳述して戴いた.多数例を扱わなくてはならない方々にとって参考になる所大なるものがあると思っている.さらに最近出現したコロナビを使っての挿入法,避けては通れない偶発症の問題もそれぞれ章を設け詳述して戴いた.
本書は,これから大腸内視鏡検査を始める方々,あまり経験のない方々に有用であるのみならず,すでに多数例の経験ある方々にとっても,一読して戴ければ他の方の実施している方法を具体的に知ることができ,一層の技術の向上を目指す上で重要なヒントを与えてくれるものと確信している.
座右に備えていただき,必要に応じ参照して戴くことを心より願っている.


平成15年3月
聖マリアンナ医科大学客員教授
日本消化器内視鏡学会理事長
丹羽 寛文
内 容
1.検査に必要な解剖学 三嶋 秀行,他
1.大 腸
2.大腸壁の構造
3.大腸の血管支配
4.大腸のリンパ系
2.硬いスコープを用いた挿入法
1)基本操作 田村 智
  • 1.大腸の走行
  • 2.前 投 薬
  • 3.大腸内視鏡挿入手技
    • (1) 術者のレベルの問題
    • (2) 術者の姿勢と被験者の体位
    • (3) 部位別挿入法
    • (4) 脾彎曲部の越え方
    • (5) 横行結腸の進め方
    • (6) 肝彎曲部の越え方
    • (7) 盲腸から回腸末端部へ
2)硬度可変式スコープの操作 五十嵐 正広,他
  • 1.スコープの特徴
  • 2.検査の実際
    • (1) 最軟での検査
    • (2) 硬度を変えるタイミング
  • 3.偶発症の予防
  • 4.取扱の注意点
3.軟らかいスコープを用いた挿入法
1)基本操作 光島 徹
  • 1.大腸内視鏡開始前の注意事項
  • 2.スコープ挿入手技
    • (1) 肛門から直腸・S状結腸部へ
    • (2) 直腸・S状結腸部からS状結腸へ
    • (3) 肛門側S状結腸からS状結腸・下行結腸移行部へ
    • (4) S状結腸・下行結腸曲の越え方
    • (5) 肛門側下行結腸から脾彎曲部へ
    • (6) 脾彎曲部の越え方
    • (7) 横行結腸脾彎曲から肝彎曲へ
    • (8) 肝彎曲部の越え方
    • (9) 上行結腸肝彎曲から盲腸へ
    • (10) 回盲弁の越え方
2)硬度可変式スコープの操作 大政 良二
  • 1.CF-SVを用いて大腸内視鏡挿入を行う場合の注意点
  • 2.硬度可変式大腸内視鏡を用いた挿入法
  • 3.CF-240Aの使用経験について
  • 4.考 案
  • 5.偶発症の予防対策として
4.初級者のための硬度可変式スコープの操作 藤沼 澄夫
1.スコープの仕様
2.軸硬度可変機能の有無と盲腸への挿入性
5.挿入困難部位での操作 五十嵐正広
1.挿入手技
2.基本操作
3.肛門から直腸へ
4.直腸の通過
5.rectosigmid(RS)からS状結腸へ
6.S状結腸-S状・下行結腸移行部(SD)の通過
  • (1) αループでの挿入
  • (2) 逆αループでの挿入
  • (3) Nループでの挿入
7.脾彎曲部の越え方
8.横行結腸から上行結腸へ
9.上行結腸から盲腸,終末回腸へ
6.大腸内視鏡挿入法の基本的なコツ 樫田 博史
1.挿入の基本
2.部位別の挿入テクニック
3.体位変換について /85
4.圧迫について /86
5.難しい腸とその対策
6.初心者のトレーニグ-硬いスコープと細く軟らかいスコープ
7.合理的な捻り・短縮操作の応用 趙 栄済
1.前 処 置
2.前 投 薬
3.スコープの点検
4.スコープの把持
5.検査手順および挿入手技
  • (1) 直腸指診
  • (2) 肛門部~直腸S状結腸移行部
  • (3) S状結腸~下行結腸
  • (4) 下行結腸までの短縮直線化
  • (5) 下行結腸~脾彎曲部~横行結腸中央部
  • (6) 横行結腸中央部~肝彎曲部
  • (7) 肝彎曲部~上行結腸~盲腸
  • (8) 回盲弁~回腸末端へ
6.スコープの選択
8.術者にやさしい内視鏡検査
1)基本操作 小山 洋,他
  • 1.二人法
  • 2.坐位二人法の実際
  • 3.挿入手技
    • (1) 腸管ひだの基本的な越え方
    • (2) スコープの直線化
    • (3) 体位変換
    • (4) 用手圧迫法
    • (5) 吊り天秤法5
    • (6) 深呼吸の応用
  • 4.各部位におけるトラブル対処法
    • (1) 直腸・S状結腸(Rs)を越えられないとき
    • (2) S状結腸の途中(肛門縁から30cm前後)で痛みを訴える場合
    • (3) S状結腸の途中(肛門縁から50cm前後)で痛みを訴える場合
    • (4) S状結腸でスコープがとぐろを巻き痛みを訴える場合
    • (5) S状結腸・下行結腸移行部(SDJ)を越えられない場合
    • (6) SDJを越えたのにスコープが進まない場合
    • (7) 脾彎曲部を越えたのにスコープが進まない場合
    • (8) 横行結腸の右半分にスコープが進入できない場合
    • (9) 肝彎曲部を越えられない場合
    • (10) 肝彎曲部を越えたのにスコープが前に進まない場合
2)硬度可変式内視鏡の実際 小山 洋,他
  • 1.スコープの硬度について /114
  • 2.軟らかいスコープとスライディング・チューブの問題
  • 3.硬度可変式内視鏡による二人法の実際
  • 4.スコープの硬度を変換するタイミング
  • 5.硬度可変式内視鏡の利点
  • 6.硬度可変式内視鏡の改善すべき点
  • 7.偶発症の予防策
9.コロナビを用いた挿入法 多田 正大
1.大腸内視鏡はなぜ苦しいのか?
2.なぜX線透視が必要か?
3.X線に代わるコロナビの開発
4.コロナビの臨床評価
6.コロナビを用いたループ挿入法の概略
7.大腸内視鏡検査の近未来像
10.注意すべき偶発症 金子 榮藏
1.全国調査に見る偶発症の実態
2.偶発症の頻度と内容