臨床に結びつく重要な基礎を明快に解説.
血液浄化器 性能評価の基礎
- 【【著】】
峰島 三千男
- 【ISBN】
4-88875-143-9
- 【本体価格】
1,800円
- 【刊行年月】
2002年 06月
- 【版組】
A5判
- 【ページ数】
96ページ
- 【在庫】
なし
序文
人工腎臓にはじまった血液浄化技術は拡大を続け,多数の患者の命を救った.1945年にはじめて人工腎臓によって急性腎不全患者を救命し得たDr. Kolffにとって,同患者は17例目であったときく.周りからの非難の中,自分自身で確立した技術を信じ,あきらめずにチャレンジした結果が,今日の血液浄化療法の礎になっている.血液浄化の黎明期を築いた多くのパイオニアたちに畏敬の念をいだく.一方,今日の血液浄化療法に目を向けると,慢性腎不全患者数の増加に伴い,この分野に従事する,医師や研究者の数は増大し続けているにもかかわらず,透析に代わる次世代の血液浄化をめざした研究者はほとんどいないのに気づく.それどころか,多くの医療従事者は,現在の血液浄化療法が永遠に続くことを祈っているかのごとくである.
パイオニアたちの情熱はどこから生まれたものであろうか.独創的な思考を育むような教育環境を築くことはもちろん重要であるが,研究者としての資質を支えているのは,新しい領域にも対応できる基礎学力と思われる.血液浄化をサイエンスとしてみた時,それにふさわしい教科書がほとんどないのに驚く.学会などでまれに基礎的な発表に遭遇すると,聴衆にわからない言葉で一方的に発表したり,臨床との隔たりを多くの臨床家によって指摘される場面をよくみかける.前者は発表者に臨床応用へのヴィジョンがないため,後者は指摘する臨床家に基礎を大事にする度量がないためである.
このような世界で仕事をしてきた著者は,臨床に結びつく基礎を重要と考えている.本書はそのような観点に立って書いたもので,今回は血液浄化で中枢をなす血液浄化器の性能評価法について,取り上げさせていただいた.
生意気なことを申し上げたが,この本を執筆できたのも,学生時代から医工学の基礎を教えてくださった,わが恩師早稲田大学酒井清孝先生と血液浄化にかかわる病態生理をご教授いただいた,太田和夫先生,阿岸鉄三,秋葉 隆先生をはじめとする東京女子医科大学のスタッフの皆様のお陰である.この場をお借りして深謝申し上げる.
また今回,発刊の機会を与えてくださった,(株)日本メディカルセンター編集室の皆様に,またその母体となった同社発刊の「臨牀透析」工学・基礎シリーズでともに連載してくれた湘南工科大学の山下明泰先生に御礼申し上げる.
内 容
- 第1章 クリアランスとダイアリザンス
- Ⅰ.クリアランス、ダイアリザンスの定義
- II.クリアランスの算出法
- 1.血液サンプリングによる方法
- 2.血液、透析液サンプリングによる方法
- 3.血液、透析液濃度の経時変化から求める方法
- 4.除去量から求める方法
- III.クリアランスに及ぼす影響因子
- 1.血液流量QBの影響
- 2.透析液流量QDの影響
- 3.血球成分の影響
- IV.総括物質移動係数に及ぼす影響因子
- V.各種血液浄化法におけるクリアランス
- 1.血液濾過(HF)
- 2.血液透析濾過(HDF)
- 3.連続的腹膜透析(CAPD)
- 4.吸着療法
- 【練習問題】
- 第2章 ふるい係数
- I.みかけのふるい係数
- II.濃度分極モデル
- III.みかけのふるい係数に及ぼす影響因子
- IV.真のふるい係数と輸送係数
- V.血液浄化器における分画分離特性
- 【練習問題】
- 第3章 透水性能
- I.血液の限外濾過特性
- II.ゲル分極モデル
- III.限外濾過性能に及ぼす影響因子
- IV.濾過器の透水性を表す性能指標
- V.限外濾過器透水性の経時減少
- VI.血液の精密濾過特性
- 【練習問題】
- 第4章 血液浄化器の性能評価法
- I.血液浄化器の性能評価法
- II.性能評価基準
- III.評価結果
- 1.限外濾過率(UFRP)
- 2.尿素のクリアランス
- 3.β2-MGのクリアランス
- IV.血液浄化器の機能分類と適応病態