熟練の大腸内視鏡医が日常経験した興味深い症例を持ち寄って討論し,厳しく批評し合った内容をまとめたもので,日常診療に必ず役立つ書.


大腸疾患ケーススタディ

診断の基本から最先端まで

  • 【編集】 武藤 徹一郎/多田 正大
  • 【ISBN】 4-88875-141-2
  • 【本体価格】 6,800円
  • 【刊行年月】 2002年 04月
  • 【版組】 B5
  • 【ページ数】 152ページ
  • 【在庫】 なし

序 文
大腸癌による死亡率は年々増加の一途を辿っている.50年前に比べて8倍の増加という驚くべき値である.今や消化器専門医にとって大腸癌は胃癌と並んで診療のターゲットとなる重要な臓器となってきた.この傾向に呼応して,当然のことながら多くの成書が出版されるようになった.30年前には大腸に関する成書など1冊もなかったのに,大変様変わりである.各成書とも写真あり図表ありで,それぞれに工夫に満ちた力作揃いである.しかし,いずれも教科書的によくまとめられていて,知識の修得,整理には役立つものの,日常診療で問題になる疑問に対しては,必ずしも明確な答えを与えてくれてはいないのが実状である.換言すれば,これは教科書的な成書の有する根本的な制約であり限界であると考えられる.
そこで,この限界を突破するような成書を作ろうという,新しいアイディアのもとに企画されたのが本書である.本書では,執筆者が日常経験した興味深い症例を持ち寄って討論し,厳しく批評し合った内容を,ほとんどそのまま原稿にしたものである.学会と異なり,十分な時間があったので大変意義深い討論ができたと思う.プロ同士のディスカッションだけあって実際の討論はなかなか迫力があり,本書にはそれがかなりよく再現されている.読んでいるとついその討論の中に引き込まれてしまいそうになる.読者がそう感じてくれれば,本書の企画は成功したと言ってもよいであろう.紙面の制約もあるために十分に多くの症例を選ぶことは困難であったが,少なくとも提示された症例については活き活きとした生の討論を紙上に再現できたのではないかと思っている.本書から消化管診断の基本から最先端までのエッセンスを,読者に汲み取っていただければ幸いである.
主要目次
第I章 病歴と臨床検査成績の解析
Case 1問診と肛門部指診がクローン病確定診断につながった例/帆足 俊男
Case 2病歴聴取が重要であったCowden病/清水 誠治
Case 3下部直腸はX線・内視鏡の盲点/清水 誠治
Cace 4この全周性直腸狭窄症例をどう考えるか/斎藤 幸夫
第II章 炎症性腸疾患 画像診断のポイント
Case 5skip lesionをきたした潰瘍性大腸炎/多田 正大
Case 6クローン病の回腸病変に逆行性回腸造影が有効であった例/斉藤 裕輔,他
Case 7横行結腸に限局した腸結核/横山 善文
Case 8クローン病類似のcobblestone像がみられた腸結核/田中 信治
Case 9盲腸の大きな潰瘍をどう考えるか/清水 誠治
Case 10回腸終末部の大きな潰瘍をどう考えるか/横山 善文
Case 11癌との鑑別が問題になった腸間膜脂肪織炎/清水 誠治
Case 12比較的平坦な粘膜脱症候群/田中 信治
Case 13colitic cancerの早期診断をめぐって/斎藤 幸夫
第Ⅲ章 大腸癌 深達度診断のポイント
Case 14PGかNPGか(その1)/田中 信治
Case 15PGかNPGか(その2)/田中 信治 100
Case 16このⅡa病変の深達度をどう考えるか/斉藤 裕輔
Case 17このⅡc病変の深達度をどう考えるか/斉藤 裕輔
Case 18小さいが深部浸潤した粘液癌/田中 信治
Case 19リンパ節転移のあった小さなsm2癌/田中 信治
Case 20NPG発育を示唆するsm癌/斎藤 幸夫
Case 21EUSで深達度を深く読影した隆起性病変/帆足 俊男
Case 22深達度を浅く読影した隆起性病変/斉藤 裕輔
Case 23大きな結節集族様大腸病変/田中 信治
Case 24小さな低分化型腺癌/斉藤 裕輔
コラム
◆Cowden病の診断基準
◆潰瘍性大腸炎,Cowden病,腸結核の鑑別点のポイント
◆敷石像(ベルサイユ宮殿)
◆Simple ulcer(単純性潰瘍)の治療
◆病変部位からみた感染性腸炎の鑑別診断
◆S状結腸で鋸歯状辺縁を伴う狭窄をきたす疾患
◆直腸粘膜脱症候群の疾患概念
◆dysplasiaの病理診断
◆潰瘍性大腸炎の大腸粘膜にみられた上皮性腫瘍
◆PGとNPG
◆sm細分類について
◆陥凹型早期大腸癌の治療法選択のための深達度診断
◆陥凹型早期大腸癌の治療法選択に有用な内視鏡所見
◆大腸sm癌のnon-lifting sign
◆結節集簇様大腸病変(nodule-aggregating lesion of the colon)