臨床医が本当に知りたい,診断と治療に的を絞って企画された書


炎症性腸疾患の臨床 (改訂第2版)

診断から治療まで

  • 【編集】 朝倉 均/多田 正大
  • 【ISBN】 4-88875-130-7
  • 【本体価格】 18,800円
  • 【刊行年月】 2001年 05月
  • 【版組】 B5
  • 【ページ数】 290ページ
  • 【在庫】 なし

著明に増加している炎症性腸疾患を,第一線の臨床医や研修医を対象にまとめた.
改訂にあたっての序文
本書の発刊から3年を経ていますが、読者に好評裡に迎えられ、このたび改訂版を出すことになりました。炎症性腸疾患には、感染性腸炎のように原因が明らかにされている疾患と、原因がまだ明らかにされていない潰瘍性大腸炎やCrohn病のような特発性腸疾患とがあります。胃疾患の病態の多くにヘリコバクター・ピロリが関与し、肝障害の病態の多くに肝炎ウイルスが関与することが明らかにされましたが、腸疾患原因・病態の課題の多くは21世紀に残されてしまいました。日本人の食生活の変化により腸内環境は変化し、潰瘍性大腸炎やCrohn病の羅患患者は増加しております。また、新興感染症による腸疾患も社会の国際化で無視できなくなりました。
腸疾患を迅速に、かつ正確に診断し、治療することは臨床医としての大事な努めであります。しかし、内視鏡検査やX線検査をして画像に所見が出ていても、見えても見えず、見えても読めずということがよくあります。消化器癌ですと最後に病理組織診断で決着がつきますが、炎症性腸疾患では病理医からその組織像がある疾患に矛盾しないという返事が頂けますが、最終診断は病状、病原体検査、画像、および病理組織を総合して自ら診断しなければなりません。さまざまな疾患に、発赤、びらん、潰瘍が見られます。これをいかにして読み取り、総合診断するかが臨床医として重要であります。 したがいまして、本書を企画するに当たり、まず考えたことは日常臨床に役立つ本でありたいということです。経験のある医師には当たり前の所見も、初めて経験する医師にはその所見が読み取れないことがあります。そのような方にも理解されるように、重要な所見の読み方や症例をいかに診断し治療するかを、症例報告のように経過表を挿入した治療経験の章を設け、改訂に当たっては、新たな症例もいくつか提示していただきました。治療に難渋した症例や副腎皮質ステロイドホルモンの長期使用による反省症例も取り入れ、実際の治療の難しさを読者に読み取って頂きたい。また、薬剤・治療法には現在保険適用になっていないものが一部含まれていますが、インフォームド・コンセントを十分にとって医師の責任のもとで緊急避難として治療せざるをえない場合に遭遇することもあります。また、全身症状や合併症が前面に出る症例もあるので、このような病態に対処できるような章を設けました。さらに改訂に際し、心身医学的な立場からみた病態や患者さんのQOLについての項目を設けました。この本が先生方や医療に従事する方に役立てば、幸甚であります。

2001年4月
編者
主要内容
第1章 炎症性腸疾患の診断基準
  • 炎症性腸疾患の疾患概念/潰瘍性大腸炎の診断基準/Crohn病の診断基準
第2章 炎症性腸疾患の画像診断
1.潰瘍性大腸炎のX線診断
2.潰瘍性大腸炎の内視鏡診断
3.Crohn病のX線診断
4.Crohn病のCT, MR診断
5.Crohn病の内視鏡診断(小腸,大腸病変/胃・十二指腸病変)
6.炎症性腸疾患の超音波内視鏡診断
7.炎症性腸疾患の病理診断
第3章 基本病変からみた鑑別診断
  • 縦走潰瘍/cobblestone appearance/アフタ様病変/不整形潰瘍
第4章 類縁疾患との鑑別診断
  • 腸結核/アメーバ赤痢/病原性大腸菌O157:H7腸炎/その他の感染性腸炎/単純性潰瘍とベーチェット病/虚血性腸炎/粘膜脱症候群,宿便性潰瘍,急性直腸粘膜病変/抗生物質起因性腸炎/非特異性多発性小腸潰瘍症/放射線腸炎
第5章 炎症性腸疾患の治療
1.潰瘍性大腸炎の内科的治療
  • 基本的な内科治療/免疫抑制剤/難治性潰瘍性大腸炎に対する治療/妊娠中の治療と生活管理
2.潰瘍性大腸炎の外科的治療
3.Crohn病の内科的治療
4.Crohn病の外科的治療
5.炎症性腸疾患の特殊な治療特集
  • ステロイドパルス療法/ステロイド動注療法/注腸療法/シクロスポリン/アザチオプリン/6-MP/トロンボキサン合成酵素阻害剤/タクロリムス/ウリナスタチン/スクラルファート/γ-グロブリン大量療法/漢方薬/抗アレルギー剤/白血球除去療法/高圧酸素療法/PEGによる成分栄養療法
第6章 長期経過中に発生する合併症とその対策
1.長期予後とQOL
2.潰瘍性大腸炎の合併症とその対策
3.Crohn病の合併症とその対策
4.炎症性腸疾患の腸管外合併症
第7章 心身医学からみた炎症性腸疾患