一般臨床医の肝疾患診療に役立つよう具体的な内容で解説


肝病理標本の読み方

  • 【編集】 神代 正道
  • 【ISBN】 4-88875-129-3
  • 【本体価格】 6,600円
  • 【刊行年月】 2001年 04月
  • 【版組】 B5
  • 【ページ数】 99ページ
  • 【在庫】 なし

本書は,好評により臨牀消化器内科の連載に加筆訂正を行い,さらに「正常肝の組織像」について新たに項目を加え,書籍化したものです.肝疾患の臨床現場になくてはならない参考書.
序 文
近年、従来から知られていた種々の肝疾患の病理像に関し多くの新しい情報がもたらされた。その代表的なものとして、C型肝炎の実態が明らかになるとともに、非活動性で実害のないと考えられていた20-30歳代のC型慢性肝炎が、経過とともに組織像の増悪を来たし、中年以降に至り急速に肝硬変へと進展することが判明し、慢性肝炎の組織分類の改訂を促したことが挙げられる。さらに、我が国における肝の病理診断を巡る特徴的な年代的変化として、腹部画像診断のめざましい進歩、普及、ならびに肝癌発生高危険群の定期的なfollow-up 体制の確立により、慢性肝病変における微小な結節性病変の生検標本ならびに切除標本の診断の機会が飛躍的に増加したことが挙げられる。このうち多くを占める早期の微小な肝細胞癌は異型に乏しい高分化癌よりなるため、従来の肝細胞癌の剖検例あるいは切除例に基づく、肝癌の古典的な病理学的知識では十分に対応できないことは周知のごとくである。微小結節病変の増加とともに、腺腫様過形成 (dysplastic nodule) に代表される、肝細胞癌の前癌病変ともみなされる結節性病変、あるいは境界病変の診断が新たな問題として生じてきた。また画像診断の普及は、かっては経験することの少なかった各種の結節性病変の生検例、切除例の増加をもたらし、それらの病変についての正確な病理学的知識の習得が要求されるようになった。本書は雑誌「臨床消化器内科」に連載された「肝病理標本の読み方」を基にし、上述したような各疾患の病理組織学的概念の変遷をも十分に踏まえ、加筆して内容の充実を期した。本書は内科研修医、肝臓専門医を志す臨床医、ならびに肝臓病理を専門としない病理医にとり手軽な参考書となることを目指している。日常の診療、あるいは病理診断に当たり、少しでも本書が役に立てば望外の喜びである。なお、肝病理標本、とくに結節性病変の診断に当たっては、決して標本の読みのみにとらわれることなく、画像所見をはじめ臨床所見、臨床医の意見をも考慮に容れた幅広い読み方を心がけることが重要であることを強調したい。
本書の企画から出版に至るまで、多大なご努力をいただいた日本メディカルセンターの有田敏伸氏をはじめ出版部のスタッフに深甚の感謝を表します。

平成13年3月
久留米大学医学部病理学教授
神代 正道