本書は,H.pylori除菌療法の時代を迎えた消化性潰瘍の治療法を整理し,これをまとめたものである
H.pylori 除菌時代の消化性潰瘍の治療
- 【編著】
中村 孝司
- 【ISBN】
4-88875-120-X
- 【本体価格】
13,000円
- 【刊行年月】
2000年 11月
- 【版組】
B5
- 【ページ数】
303ページ
- 【在庫】
なし
H.pylori除菌療法を中心にできるだけEvidenceに基づいた治療法に絞り,今後の潰瘍治療を展望できる書としてまとめた.
前半は大正からみた治療法,後半は薬物の有効性の検証に重点を置いた.
出版にあたって
消化性潰瘍に対する考え方はHelicobacter pylori(H.pylori)の発見以降,激変した.とくに治療については劇的なbreak throughがあり,今日世界の多くの国でH.pyloriの除菌療法が第一に選択されるべきものとなっている.
そこで本書は,H.pylori除菌療法の時代を迎えた消化性潰瘍の治療法を整理し,これをまとめて臨床の最前線に役立てることを目的に企画された.
まず,潰瘍治療がこれまでどのように行われてきたのかふり返ることから本書を始め,治療にいかに診断を役立てるかという,これまでの診断学とはやや異なった観点から,各種診断を取り上げた.
H.pyloriの時代に入って,消化性潰瘍は,1.H.pylori関連潰瘍,2.NSAID関連潰瘍,3.その他の潰瘍の順にウェイトが置かれるようになってきた.そこで,まず第一にH.pylori除菌療法を取り上げ,その意義,適応から除菌療法の実際,不成功例への対応,副作用,除菌後の問題,長期予後など,H.pylori除菌に関わるおもな問題を網羅するよう心がけた.
次にNSAID関連潰瘍の取り扱い方をまとめた.人口の高齢化とともにNSAIDを用いる機会はますます増加し,現に臨床の場では出血性胃潰瘍の多くがNSAID関連であることが実感されている.H.pyloriの除菌が進み,また日本人のH.pylori陽性率が低下しつつある今日からみて,将来は消化性潰瘍の中でももっとも大きな位置を占めるものと思われるNSAID対策はきわめて重要である.
第三に,その他の潰瘍として,ストレス潰瘍,難治性潰瘍,小児潰瘍,高齢者潰瘍の取り扱いをまとめ,次いで合併症対策,対症療法,維持療法,一般治療を取り上げた.
本書の後半は,潰瘍治療薬を主題として取り上げ,現在用いられている各種抗潰瘍薬や補助薬の作用機序,薬理,用法,効果,副作用をまとめ,臨床使用に役立てることとした.