大腸内視鏡検査ハンドブック

  • 【編著】 丹羽 寛文
  • 【ISBN】 4-88875-115-3
  • 【本体価格】 20,000円
  • 【刊行年月】 1999年 11月
  • 【版組】 四六
  • 【ページ数】 350ページ
  • 【在庫】 なし

序 文
本邦に於ける消化管内視鏡検査は,従来胃を中心としたものであった. しかし近年大腸疾患の症例の増加は著しく,大腸内視鏡検査に十分熟達していなければこの領域の専門家として通用出来なくなってきた. 大腸内視鏡は,現在ファイバースコープと電子スコープが共存するものの,電子スコープがファイバースコープにはない高度の機能を有し,しかも同時に複数の医師での検査が可能な所から急速に電子スコープが優位に立ちつつある.
大腸内視鏡検査は胃のそれと違って,各人の力量の違いが大きい.またそれぞれの疾患が症例毎にかなり異なる複雑な様相を示し,内視鏡診断を難しくしているのも周知の所である.
この様な背景から,大腸内視鏡検査の手技に重点を置いた書物,炎症性疾患,あるいは早期大腸癌のみに対象をしぼった書物はこれまでにも多数上梓されてきている. しかし一冊の書物で内視鏡の機器から検査手技さらに諸疾患の内視鏡診断,鑑別診断まで要領よく網羅した書物はないといっても過言ではない. 本書出版の意図はまさしく一冊の書物で,この全領域を要領よくカバーすることにある. 幸い多数の執筆者のご賛同を戴き,この様な編集方針で本書を上梓することが出来た.
まず冒頭の数章では基本となる機器の理論,構造,その取り扱い,検査手技を説明した.特に検査手技は,複数の方に異なる立場から,手技のこつともいうべき事項を詳述して戴いた.前処置についても各種の方法を記述し,施設の実情に応じて選択出来る様試みた.
ついで正常大腸の所見を説明し,主要な疾患については,その所見の読みと共に関連した事項を細かく取り上げ,日常の診療に十分役立つことを心掛けた.さらにそれぞれの疾患で今日問題になっていることにも触れ,今後の研究,将来の動向に向けて突っ込んだ記載を試みた.加えて色素法,拡大観察,超音波内視鏡検査などにも触れ,内視鏡的治療も必要最低限ではあるが解説した.
検査にあたっては照診による診断のみならず,所見の再検討の為の写真撮影あるいは磁気的な記録,的確な生検の実施,さらに内視鏡治療の為にも詳細な観察が前提になることはいうまでもない. しかも内視鏡検査に際しては,動きのある対象を短時間に正確に把握し判断を進めなくてはならない.このため本書では,的確に検査を行う上に必要な事項を漏れ無く取り上げる様に努めてみた.
以上により本書は大腸内視鏡検査をこれから始める方のみならず,高度の専門家にとっても十分役立つ内容になったものと自負している.
座右に備えて戴き,日常の診療の場で必要に応じ紐解いて戴ければ編者ならびに執筆者にとって望外の幸と思っている.
終わりに本書の刊行にあたり編者の無理な要求を入れて執筆にあたられた執筆者各位に心からの謝意を申し上げたい.

平成11年10月
目 次
1.内視鏡機器とその取り扱い
1)電子スコープ 黒沢 進・中村 孝司
2)ファイバースコープ
2.検査に必要な解剖学 吉川宣輝
3.適応と禁忌 加嶋 敬・光藤章二
4.機器の消毒 小越和栄
5.結腸検査のための前処置
1)マグコロール法 岩井淳浩
2)その他の前処置法 田中信治
3)前処置と腸管内ガス 岩井淳浩
6.電子スコープによる検査
1)一人法と二人法の選択 岩井淳浩
2)一人法での基本操作
  • a. 硬いスコープの操作 田村 智
  • b. 軟らかいスコープの操作 光島 徹
3)二人法での基本操作 小山 洋
4)硬度変換式スコープでの操作 佐竹儀治
5)検査のコツと留意点
  • a. 挿入困難部位での操作 五十嵐正広
  • b. 補助器具の応用 佐竹儀治
  • c. X線透視下コントロール 多田正大
6)撮影と記録 川口 淳
7.ファイバースコープによる検査 生沢啓芳
8.出血時の緊急内視鏡検査 五十嵐正広
9.色素法の応用
1)色素散布法 今村哲理
2)経口法 岩井淳浩
10.拡大内視鏡の応用 田尻久雄.加藤茂治
11.超音波内視鏡検査 中島正継
12.生検と基本的治療手技
1)生検 北野厚生
2)基本的治療手技 竜田正晴
13.偶発症の発生と症状,予防について
1)概論 金子榮藏
2)穿孔と出血時の症状 丹羽 寛文
3)予防 大川清孝
14.検者に対する注意 勝 健一
15.大腸の正常所見 酒井義浩
16.炎症所見の性状と鑑別診断
1)病変の分布,色調,潰瘍随伴の有無 棟方昭博
2)潰瘍所見と鑑別
  • a. 潰瘍の分布
  • b. 円形潰瘍
  • c. 不整形潰瘍
  • d. 縦走潰瘍
  • e. 輪状潰瘍
  • f. 瘢痕
  • g. 潰瘍周辺粘膜の性状
3)アフタ様病変 芹澤 宏
4)炎症性ポリポーシス
17.潰瘍性大腸炎
1)疾患概念,診断基準 牧山和也
2)内視鏡所見
3)鑑別診断
4)潰瘍性大腸炎と皮膚病変 丹羽 寛文
5)長期経過での粘膜変化 丹羽 寛文
6)displasiaと癌化,フォローの基本方針 川口 淳
18.クローン病
1)疾患概念,診断基準 朝倉 均
2)内視鏡所見
3)外瘻と肛門病変
4)鑑別診断
19.急性感染症 江川直人
1)検査上の注意
2)赤痢
3)病原性大腸菌O-157腸炎,その他
4)サルモネラ
5)キャンピロバクター
6)腸炎ビブリオ
7)エルシニア腸炎
20.その他の慢性感染症
1)腸結核 馬場忠雄
2)アメーバ赤痢 永尾重昭
3)クラミジア直腸炎
4)日本住血吸虫症 藤井隆広
21.虚血性大腸炎 北野厚生
22.抗生物質起因性腸炎
1)急性出血性腸炎
2)偽膜性腸炎
23.ポリープ
1)分類 板橋正幸
2)形態別,組織別の内視鏡像の典型所見 武藤徹一郎・渡辺聡明
3)治療の適応 工藤進英
4)フォローについて 藤井隆広
24.ポリポーシス 丹羽 寛文
1)家族性大腸ポリポーシス
2)Gardner症候群
3)Peutz-Jeghers症候群
4)Cronkheit-Canada症候群 永尾重昭
5)lymphiod hyperplasia
25.粘膜下腫瘍 武藤徹一郎・渡辺聡明
26.悪性腫瘍
1)進行癌 上西紀夫
2)早期癌
  • a. 隆起型 武藤徹一郎・渡辺聡明
  • b. 陥凹型,表面型 工藤進英
  • c. 結節集簇性病変,LST 工藤進英
  • d. 生検上の問題点,ポリペクトミーの意義,病変に応じた扱い
3)肉腫,悪性リンパ腫 朝倉 均
4)カルチノイド 小山 洋
27.血管性病変,angiodysplasia 浜本哲郎
28.結腸憩室症 上西紀夫
29.その他の疾患 小平 進
1)放射性直腸炎
2)非特異性大腸潰瘍
3)子宮内膜症 永尾重昭
4)腸管気腫性嚢胞症(腸管嚢胞性気腫) 永尾重昭
5)Buerger病
6)単純性潰瘍
7)Behcet病
8)膠原病の腸管病変
9)アミロイドーシス 齋藤利彦
10)メラノーシス
11)腸重積 齋藤利彦
12)S状結腸軸捻症
13)好酸球性腸炎 齋藤利彦
30.手術後の大腸,人工肛門からの検査 丹羽寛文
31.直腸の潰瘍性病変 清水誠司
1)粘膜脱症候群,その他
2)宿便性潰瘍
3)急性出血性直腸潰瘍
4)急性直腸粘膜病変
32.肛門部の疾患 岩垂純一
33.虫垂関連病変 櫻井幸弘