潰瘍性大腸炎とクローン病患者と家族のためにやさしく解説


潰瘍性大腸炎とクローン病

  • 【著】 多田 正大
  • 【ISBN】 4-88875-114-5
  • 【本体価格】 1,600円
  • 【刊行年月】 1999年 11月
  • 【版組】 A5
  • 【ページ数】 214ページ
  • 【在庫】 なし

潰瘍性大腸炎とクローン病患者と家族のために書き下ろされた解説書.難治性のIBDと診断されて悩んでいる患者さんに,病気の説明のためにもお勧めください。
序文より
長引く下痢や血便に気づいて病院へ行ったところ,医者から「難病の潰瘍性大腸炎です」,「クローン病という治らない病気です」といわれて,突然のことでパニックに陥ったあなた・・・・。 家庭医学の本を読んでも詳しいことが書いてない,主治医から十分な説明がない,あってもよく理解できない,どうしたらよいのだろうかと途方に暮れているあなた・・・・。
潰瘍性大腸炎とクローン病(IBD)の患者相談会に出席して,大勢の方の切実な体験談を聞いていると,皆さんの不安の大きさ,病気に対する医者の説明不足などがよくわかります。「3分間診療」と悪口をいわれている忙しい診療中に,これらのやっかいな病気について,医者に十分な説明を求めるほうが無理です。社会は情報開示に向けて走り出していますし,実際,医者にはわかりやすい言葉で病気について説明する義務があり,患者や家族の皆さんは納得ゆくまで質問する権利はあるのです。
しかしわたしも医者のはしくれですから,ちょっと弁解させて下さい。IBDの病気の仕組みが十分に解明されていませんし,治療についても決定的に有効なものがありません。複雑な疾患ですから,たとえ1時間かけても皆さんが納得できるように説明できないのです。
病気について素人が読んでも理解できるような本,手引書が少ないのも事実です。参考書がないと不安に思うのは当然です。私も医者向けの本や論文は多数執筆してきましたが,本当に大切なのは患者や家族が理解できる本を作らなければならないと痛感しているのです。そこで忙しい診療,研究の合間に,皆さんに理解できるような内容のIBD読本を作ろうと決心をし,昼夜を惜しんで執筆した結果,本書が完成しました。
IBDに関する30年余の私の経験と知識を余すところなく記述して,わけのわからない病気でお困りのあなたの羅針盤になりたいと考えています。本文の合間に私が診療した方々の貴重な体験談を入れています。体験談は匿名にしていますが,なかには実名を使ってもよいから「困っている人のために,是非とも私の経験を知らせてあげて欲しい」という有難い言葉も頂戴しています。
とにかく大変な病気ですが,気持ちをしっかり持って,前向きに明るく病気と付き合って下さい。
目 次
第1章 原 因-原因不明の病気といわれているが?
1.腸炎には2種類ある
2.非特異性腸炎とは
3.増加しているIBD
4.なぜIBDが増加している?
5.IBDは原因不明の疾患
6.細菌,ウイルス説
7.アレルギー説
8.明らかにアレルギーが原因であったケース
9.遺伝説
10.酵素説
11.免疫異常説
12.精神神経説
第2章 病 態-病気を正しく理解するために
1.炎症の深さ
2. 病変範囲
3.クローン病の肛門部病変
4.肛門をみせることを恥じてはならない
5.活動期と緩解期
6.潰瘍性大腸炎の症状
7.潰瘍性大腸炎の初期症状
8.血便で潰瘍性大腸炎は診断できるか?
9.クローン病の症状
10.緩解期になったのに下痢が続く/39
11.IBDと合併症
12.潰瘍性大腸炎とクローン病の違い
13.潰瘍性大腸炎の重症度評価
14.クローン病の重症度評価
15.IBDは大腸ガンになりやすい?
16.IBDの大腸ガンは発見が遅れる
17.IBDは“治らない病気”?
18.IBDは“治りにくい病気”
19.多くの潰瘍性大腸炎患者は通院していない
第3章 診 断-正しい診断を受けるために
1.腸の検査は簡単ではない
2.要領よく症状を説明する
3.医者が知りたい症状
4.言いたいことはメモにして
5.医者が嫌う問診の回答
6.医者が嫌がる持参便
7.糞便細菌検査はIBD診断に不可欠
8.大腸のX線検査
9.小腸のX線検査
10.大腸の内視鏡検査用スコープ
  • (a) 硬性鏡
  • (b) ファイバースコープ
  • (c) ビデオ内視鏡
11.内視鏡検査のための前処置
12.手軽にできるシグモイドスコープ検査
13.内視鏡の検査時間は何分間くらい?
14.生検とは?
15.小腸の内視鏡検査
16.腹部超音波検査
17.血液検査は何を調べる?
第4章 確定診断がついたあとの手続き-特定疾患医療給付制度について
1.IBDと診断されたらすぐにしなければならない手続き
2.特定疾患医療給付制度の手続き
3.どのような特典がある?
第5章 薬物療法-薬の正しい服用の仕方と副作用
1.IBDの薬物治療は後追い治療
2.ステロイドとは?
3.ステロイドの使用法
4.リンデロン坐薬の使い方
5.直腸・S状結腸炎型に効果があるステロネマ
6.ステロネマの使用法
7.ステロイドの内服
8.ステロイドの静脈注射
9.ステロイド動注療法
10.ステロイドの副作用
  • (a) 感染の誘発と悪化
  • (b) 胃潰瘍や十二指腸潰瘍を悪くする
  • (c) 糖尿病を悪くする
  • (d) 精神神経症状が出現する
  • (e) 顔つきが変る
  • (f) 骨が脆くなる
11.おかしいと思ったら
12.かつての特効薬,サラゾピリン
13.新しい期待の星,ペンタサ
14.ペンタサにも副作用はある
15.免疫抑制剤
16.抗アレルギー薬
17.漢方薬
18.薬剤治療の原則
19.潰瘍性大腸炎の薬剤治療の原則
20.クローン病の薬剤治療の原則
21.難治性の炎症が続く場合
22.緩解期になれば薬剤を減量する
23.ステロイド依存症
24.維持療法
第6章 食事と栄養療法-適切な食事制限のために
1.食事療法の基本
2.目安となるカロリー
3.よく噛んで食べる
4.好ましい食品と避けたほうがよい食品
5.1年間,豆腐を食べ続けた話
6.調理方法にも注意
7.おおよそのカロリー計算の仕方
8.脂肪はIBDの胃腸に大敵
9.牛乳は胃腸によくないのか?
10.乳糖不耐症を克服しよう
11.食事日記で知る食物アレルギー
12.チョコレートはほどほどに
13.食事時間が辛い
14.栄養療法とは?
15.点滴で栄養補給をする中心静脈栄養
16.3種類ある経腸栄養剤
17.科学的には理想的な成分栄養剤
18.2種類ある消化態栄養剤
19.口から飲める半消化態栄養剤
20.栄養療法の効果
21.どのように栄養療法を行うか?
22.飼犬の気持ちがわかった話
23.どこまで続ける緩解期の食事制限
24.英国在住のHさんの疑問
第7章 外科治療-できれば避けたい外科手術
1.どのような時に手術を行うのか?
2.潰瘍性大腸炎の絶対的手術適応
3.中毒性巨大結腸症とは?
4.中毒性巨大結腸症になる原因
5.クローン病の絶対的手術適応
6.相対的手術適応
7.クローン病では手術後の再発が多い
8.潰瘍性大腸炎の手術法
9.クローン病の手術法
10.切らずにできるバルーン拡張術
11.クローン病の肛門病変
第8章 心理療法-精神面のサポートが大切
1.IBDの心理テスト
2.心理テストの結果
3.バウムテスト
4.バウムテストからわかったこと
5.潰瘍性大腸炎患者は自信をもつこと
6.「病は気から」は本当
7.ストレスがIBDを悪くしたケース
8.精神的リラックスがIBDをよくしたケース
9.韓国出張で手術を回避
10.退院して潰瘍性大腸炎を克服
11.明るい気持ちが病気をよくする
12.コンサートが病気を治す
13.小田和正にまつわるOさんの思い出
14.オフコースは素晴らしい
15.Oさんもコンサートでよくなった
16.仲好し3人組の神戸旅行
17.新しい治療法
18.患者と医者の心の絆
19.気持ちで変わる薬の効果
20.女性は治りやすい?
21.偉い坊さんにもらった妙薬
22.サイババの奇蹟1
23.ヨガはなぜ健康によいのか?
24.現代社会では心理療法が必要
25.消化器科ではできない心理療法
第9章 妊娠と出産-元気な赤ちゃんが欲しい
1.IBDは遺伝しない
2.父親がIBDの場合
3.母親がIBDの場合
4.計画出産のすすめ
5.うっかり妊娠した場合
6.出産を決意したからには前向きに
7.栄養療法を継続して無事出産
8.やっぱり赤ちゃんが欲しい
9.一番嬉しかったこと,辛かったこと
第10章 明日に向かって-上手なIBD学習の仕方
1.よりよいQOLを目指して
2.今,この時を大切に
3.仲間と一緒にストレス発散
4.皆でしゃべって勇気をもとう
5.病気をみつめる勇気
6.IBDクラブはどこにある?
7.IBDクラブだけがすべてではない
8.地元の主治医選びが大切
9.医者選びも寿命のうち
10.主治医にもIBDを勉強してもらう
11.セカンド・オピニオン
12.情報開示
13.参考書はないか?
14.明日に向かって
コラム
1.病理用語の解説
2.タバコとIBD
3.検査が楽になる内視鏡
4.新しいステロイド
5.ステロイドを虫垂から入れる
6.白血球除去療法
7.エイコサペンタエン酸が効く?
8.明るく生きるクローン病患者