【 要旨 】 |
透析患者のウイルス感染は血液を介する頻度と危険性が大きい.C型肝炎ウイルスは透析患者では非透析患者の10倍以上の感染率があり,B型肝炎ウイルスの保有率も高い.血液浄化療法を要するHIVウイルス感染者も増加している.感染経路は輸血が以前は多かったが,現在は激減した.一方,透析歴が長くなるに従いB,C型肝炎ウイルスの保有率は増加し,院内感染による集団発生がHIVも含めて報告されている.現在,透析患者の肝炎ウイルスの主要感染経路は院内感染である.その予防には,輸血後検査も活用しキャリアを含めた感染者を正確に診断しておき,基本的な感染予防手技を確実に行うことが大切である.これによりC型肝炎の新規発生を激減させることが可能である.既感染者においては肝炎の進行は非透析者に比べ幸いにも緩やかであるが,HIV感染者では進行が速い.これは,透析後にC型肝炎ウイルス量が減少し透析患者ではウイルス量が非透析患者より少ないこと,肝毒性の尿毒症性物質が除去されることなどによるが,透析膜からのウイルスの漏出が完全に否定されているわけではない.抗ウイルス薬の使用は投与量など今後検討する必要がある.一方,肝癌は肝障害の進行が遅いこともあり非肝硬変例でもその発症に注意を払うべきで,肝硬変を有する例では数%と高率の肝癌発症を認めている.HIVの予後は多剤併用で改善している. |