やさしくわかりやすい 患者のための透析生活マニュアル(改訂第6版)

  • 【監修】 鈴木 正司
  • 【編著】 信楽園病院腎センター
  • 【ISBN】 4-88875-178-1
  • 【本体価格】 2,400円
  • 【刊行年月】 2006年 03月
  • 【版組】 A5
  • 【ページ数】 152ページ
  • 【在庫】 なし

はじめに
お医者さんから突然に「透析が必要です」と宣告されて,驚いたり,困惑したり,慌てふためいておられる方がいることでしょう.あるいは,ずいぶん以前からそのような説明があったものの,まだまだ先のことと考えていた方もいるのではないでしょうか.

■ 残念ながら一度失われた腎臓の働きは,健康な腎臓を移植しないかぎり回復できません.しかし,わが国での腎臓移植の実施数はまだまだ少なく,移植を待っているすべての人の希望を満たすことは到底できない現状にあります.そのため,透析治療が長期になることは避けられないのが現状です.
■ この医療は,医療スタッフの努力だけでは治療の成績は向上しません.患者さん自身がこの治療を理解し,正しい知識をもって自ら努力をしていくことが重要です.
■ 透析患者さんおよびそのご家族向けのマニュアルとして,1988年より本書を出版して参りましたが,今回は,より理解しやすい内容と表現に努めることに留意し,新たに全面的な書き換えを行うことといたしました.
■ これから透析療法を始める方やご家族の方々には,最近の透析治療のあらましをできるだけ平易に解説するように配慮しました.また,すでに透析治療が生活の一部になっている方々に対しては,誤った理解を修正し,知識を再整理していただけるように工夫をいたしました.


2006年1月吉日
信楽園病院院長
鈴木 正司
目 次
第1章 腎臓のはたらき
1.腎臓のしくみ
2.腎臓は体液の恒常性を維持している
3.腎臓は血液を弱アルカリ性に維持している
4.腎臓はホルモンを作っている
第2章 腎機能の低下に発展する病気
1.腎臓自体に起こる病気
2.生まれたときからある腎臓の異常
3.全身性の疾患に付随して起こる腎疾患
第3章 腎不全とはどういうもの?
1.腎臓は50%機能していれば困らない
2.ろ過機能が40%以下からが問題となる
3.腎不全と尿毒症とは同じではない
第4章 尿毒症とはどういうもの?
1.尿毒症の症状
  • 1)自覚症状
  • 2)他覚症状
2.尿毒症の原因
第5章 透析療法の始まりを遅らせる治療(1)
1.食事療法
  • 1)たんぱく質の制限
  • 2)十分なエネルギーの摂取
  • 3)塩分の制限
2.高血圧の治療
第6章 透析療法の始まりを遅らせる治療(2)
1.利 尿 薬(ラシックスなど)
2.抗凝固薬,抗血小板薬(ペルサンチンなど)
3.活性炭内服薬(クレメジンなど)
4.リン吸着薬(レナジェル,フォスブロックなど)
5.重 曹
6.必須アミノ酸
7.尿酸生成阻害薬(ザイロリックなど)
8.活性型ビタミンD(アルファロール,ロカルトロールなど)
9.エリスロポエチン(注射)
10.感染症治療薬
第7章 こういう症状なら透析をはじめます
1.自・他覚症状
2.検査データ
3.日常生活の活動性
第8章 どちらを選ぶ? 血液透析と腹膜透析
1.血液透析(HD)
2.腹膜透析(CAPD)
第9章 血液透析(HD)の実際
1.透析器(ダイアライザー)
2.血液回路
3.患者監視装置
4.身体側の血液出入り口(ブラッド・アクセス,あるいは,バスクラー・アクセス)
5.血液凝固を阻止する薬剤
6.透 析 液
7.水処理装置
第10章 シャントは血液透析の命綱
1.内シャントの手術
2.内シャントで注意すべきこと
3.内シャント以外に血流を確保する方法
4.内シャントは自己管理が重要
第11章 腹膜透析(CAPD)の実際
1.腹膜カテーテルの埋め込み手術
2.液交換のやり方にいろいろな工夫がある
3.CAPDの特徴と弱点
4.CAPD液
第12章 透析が始まっても必要な食事療法
1.水 分
2.塩 分
3.たんぱく質
4.熱量(エネルギー)
5.カリウム
6.リ ン
7.糖尿病から腎不全になった方では・・・
8.血糖を調節する薬
第13章 透析療法と検査データの見方
1.毎月の血液検査
  • 1)尿素窒素(BUN)の透析前後の数値
  • 2)クレアチニン(Cr)
  • 3)透析量の指標(Kt/V)(ケー・ティー・オーバー・ブイ)
  • 4)カリウム(K)
  • 5)リン(P)
  • 6)ヘマトクリット(Ht),ヘモグロビン(Hb)
  • 7)その他の検査データ
2.毎月ではない血液検査
3.胸部レントゲン写真
4.骨のレントゲン写真
5.心 電 図
第14章 血液透析中のいろいろな症状
1.血圧低下
2.血圧上昇
3.吐き気(嘔気),嘔吐
4.筋肉のけいれん
5.腹痛,下痢
6.不 整 脈
7.か ゆ み
8.発 熱
9.血 管 痛
10.穿刺部位の出血や血腫
第15章 血液透析中の偶発事故でもあわてないために
1.ダイライザーや回路内での血液凝固
2.膜破れ,血液もれ(リーク)
3.脱 血
4.空気の誤入
5.停電の場合
6.緊急に透析を離脱する場合
第16章 透析を長期に継続すると生じやすい合併症
1.高 血 圧
2.低 血 圧
3.貧 血
4.心 不 全
5.脳血管障害
6.骨・関節障害
  • 1)二次性副甲状腺機能亢進症
  • 2)アミロイド骨・関節症
7.動脈硬化
8.末梢神経障害
9.感 染 症
10.肝 炎
11.消化器症状
12.皮膚症状
13.性機能障害
14.早期閉経
15.外科手術,眼科手術,歯科処置を受ける場合の注意
6.緊急に透析を離脱する場合
第17章 透析を始めても必要な薬があります
1.血圧を下げる薬
2.血圧を上げる薬(リズミック,メトリジンなど)
3.貧血改善の薬(エポジン,エスポーなど)
4.カリウムを下げる薬(カリメート,アーガメイトゼリーなど)
5.便秘を改善する薬
6.かゆみを抑える薬
7.リンを下げる薬(レナジェル,フォスブロック,カルタンなど)
8.カルシウム代謝を調節する薬(アルファロール,ロカルトロールなど)
9.尿量を増やす薬(ラシックスなど)
10.尿酸を下げる薬(ザイロリックなど)
11.高脂血症の薬(メバロチン,リポバスなど)
12.消化器の薬(ガスターなど)
第18章 腹膜透析(CAPD)に特有な合併症
1.腹膜カテーテルのトラブル
  • 1)カテーテルの閉塞
  • 2)カテーテルの位置異常
  • 3)カテーテルの劣化
  • 4)カテーテル出口部や皮下トンネンル部の感染
2.腹腔内の感染(腹膜炎)
3.被のう性腹膜硬化症(EPS)
第19章 腎臓をもらって移植する
1.わが国の腎臓移植の現状
2.わが国の臓器移植ネットワーク
3.意思表示カード
4.献腎移植を希望する場合
5.献腎移植の実際
第20章 透析や移植治療のための法律や制度
1.透析治療にかかる医療費
2.高額疾病の高額療養費制度
3.身体障害者手帳
4.自立支援医療(更生医療)
5.自立支援医療(育成医療)
6.老人保健制度
7.重度身体障害者医療費助成制度
第21章 日常生活の一部に透析を取り込んで暮らす
1.年間で624時間をどう使う?
2.透析以外の時間帯はどう過ごす?
3.「透析がすべて」ではありません
4.日常生活において注意すべきこと
  • 1)快食・快便
  • 2)適度な運動
  • 3)タバコは「やめたほうがよい」より「やめるべき」
  • 4)お酒もやめるべきか?
治療のヒント
健康とは体液の量や成分が適正に保たれるということ
ネフローゼ症候群
次善の策の透析療法
乾燥体重:ドライ・ウエイト
カリウムを減らす調理法
血液中のカリウム濃度と心電図の変化
血液中のカリウムが増加すると・・・
酢酸不耐症
パイロジェン
活性型ビタミンD
二次性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺ホルモン(PTH)
アミロイド症
手根管症候群
バ ネ 指
日和見感染
腎臓の働きが失われたら健康な腎臓を移植する・・これがベスト
相性の良い腎臓の提供を受けるには
人間万事塞翁が馬