肝疾患の最新の知見,診断・治療をOverviewとトピックスに分けて解説


肝疾患Review 2004

  • 【【監修】】 小俣 政男
  • 【【編集】】 河田 純男/白鳥 康史/工藤 正俊/榎本 信幸
  • 【ISBN】 4-88875-163-3
  • 【本体価格】 5,800円
  • 【刊行年月】 2004年 06月
  • 【版組】 B6判
  • 【ページ数】 238ページ
  • 【在庫】 なし

序 文
今回,「肝疾患Review 2004」の出版が企画されました.肝臓疾患の診療は,年々新しい治験や診断・治療法が開発されており,これらを網羅的にReviewし,年度毎に刊行する事となりました.編集委員の先生方の御協力を頂いて,今回の出版のはこびとなりました.振り返ってみますと,B型肝炎ウイルスが発見され,丁度40年が経とうとしております.また,肝臓学会も今回,第40回を迎えております.人間で申しますと,いわば壮年期にさしかかっております.肝臓病の診療の現状はいかがなものでしょうか.この1年に部分肝移植,殊に末期の肝硬変,肝癌に対しての保険適応が承認されました.また肝癌の治療として最も期待されているラジオ波療法が保険適応となり,更には新たな抗ウイルス療法の武器となるPEG Interferonも認可され,肝臓病に対する総合戦略を立てる上でも,治療オプションが極めて多岐に亘る事にいよいよなりました.30年前の肝臓病の現場を知っている私にとって,30年間で達成された多くの成果を振り返ると同時に,本書においては最も新しい進歩をReviewしそれぞれの分野の御専門の先生にまとめて頂きました.従いまして,必ずしや進歩の著しい肝臓病診療において本書がお役に立つ事と信じております.

東京大学大学院医学系研究科消化器内科
小俣政男
目 次
第一部 Overview
1. 肝炎のより基礎的な問題
2. 肝炎のより臨床的な問題
    • I. 本邦における肝炎の疫学(1960~2003年)
    • II. 日本におけるB型肝炎の自然史
    • III. 日本におけるC型肝炎の自然史
    • IV. その他のウイルス性肝炎(HEV他)
    • V. 肝疾患自然史からみた治療の目標と治療法
3. 肝癌の診断
    • I. 画像診断(CT, MRI, US)の最近の進歩
    • II. 腫瘍マーカーの最近の進歩
    • III. 造影剤(US, MRI)の最近の進歩
4. 肝癌の治療
    • I. 肝癌の局所根治療法の進歩
    • II. 発癌抑制および根治後の背景肝治療の意義
    • III. 肝癌治療におけるTAEの位置付け
    • IV. 進行肝癌に対する治療法の進歩
    • V. 肝癌に対する肝移植の現状
    • VI. 治療法標準化のためのstaging systemの確立と評価
5. 非ウイルス性肝障害(含むアルコールとNASH)
  • (1) NASHとASH:病態と治療
    • I. NASHの病態
    • II. 日常生活指導
    • III. 薬物療法
      • 1. インスリン抵抗性改善薬2. 抗酸化剤3. 抗高脂血症薬4. その他の治療法5. 新しい治療法
    • IV. ASHの病態
      • 1. アルコール性肝炎2. アルコール性肝硬変
    • V. ASHの治療
      • 1. 治療の原則2. ピオグリタゾン3. Betaine4. 血漿交換
  • (2) 自己免疫性肝炎の成因と病態………穂苅厚史, 銭谷幹男
    • I. 疾患感受性に関与する遺伝素因
      • 1. HLA遺伝子多型2. HLA以外の遺伝子多型3. AIRE
    • II. 発症の契機となる事象
    • III. 疾患特異的自己抗原, 自己抗体
    • IV. 自己肝細胞に対する免疫学的寛容破綻の機序
      • 1. T細胞2. NKT細胞3. B細胞
  • (3) 肝内胆汁うっ滞の成因と分子機構………小林由直, 黒田誠, 足立幸彦
    • I. 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)
      • 1. PFIC1型2. PFIC2型3. PFIC2型
    • II. 妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)
    • III. 肝内結石症
  • (4) 薬物性肝障害:up-to-date………村脇義和
    • I. 発症機序
      • 1. 分類2. アセトアミノフェン肝炎3. イソニアジド肝炎4. アレルギー性肝障害
    • II. 診断
      • 1. スコアリング2. 起因薬物の同定3. 漢方薬とDLST
    • III. 起因薬物
  • (5) 生理活性物質による門脈循環調節………武田忠, 渡辺久剛, 河田純男
    • I. 門脈圧亢進症におけるアンジオテンシンIIの役割とその制御
      • 1. アンジオテンシンIIの感染以下への関わり2. アンジオテンシンII受容体拮抗薬
    • II. ヒト門脈循環におけるNOの役割
      • 1. LIP患者におけるNOの役割2. NO産生制御による門脈圧亢進症治療
第二部 トピックス
1. 肝炎のより基礎的な問題
  • (1) HBV polymerase阻害剤………加藤直也, 小俣政男
    • I. HBV複製と逆転写酵素阻害剤
    • II. HBV DNA polymeraseの構造とラミブジン耐性HBV
    • III. 新たな抗ウイルス薬
      • 1. Adefovir2. Entecavir3. Tenofovir disoproxil fumarate4. Alamifovir5. Emtricitabine6. Clevudine7. Telbivudine8. Penciclovir
  • (2) HCV増殖システム………下遠野邦忠
    • I. HCVゲノムが効率よく複製する系の作製
    • II. HCVゲノム適応変異体
    • III. 培養細胞に適応したHCVゲノムの複製は個体では抑制される
    • IV. HCVゲノムの自己複製
    • V. レプリコン細胞のIFN感受性
    • VI. レプリコン細胞を用いた抗ウイルス薬候補の探索
    • VII. ウイルス複製機構の解析と限界
    • VIII. 今後の課題
  • (3) HCV増殖と生体防御反応………佐藤憲一, 小原道法
    • I. 肝炎ウイルスに対する免疫応答
      • 1. Innate immunity2. Acquired(adaptive)immunity3. Th応答4. CTLにおける肝細胞傷害機序
    • II. 動物モデルにおける解析
    • III. HCVの持続感染成立機序
  • (4)HCV治療の基礎的戦略………坂本直哉, 榎本信幸
    • I. HCVレプリコンシステム
    • II. レプリコンシステムを用いた抗ウイルス薬の開発
    • III. HCVに対する遺伝子導入療法の基礎研究:siRNAを用いたウイルス増殖抑制
  • (5) HEVの生物学………岡本宏明
    • I. HEVのウイルス学的特徴
    • II. E型肝炎の臨床経過と診断
    • III. HEVの遺伝子型
    • IV. わが国の国内感染E型肝炎とその感染HEVの特徴
    • V. わが国のブタでのHEV感染と分離株の特徴
      • 1. 家畜におけるHEV2. 本邦のブタにおけるHEV
    • VI. HEVの感染源と感染経路
      • 1. 食用ブタ肝臓とE型肝炎2. 野生動物肉における知見3. 感染予防
  • (6) HCV感染レセプター………鈴木哲朗, 松浦善治
    • I. エンベロープ蛋白E1, E2の性状
    • II. CD81
      • 1. 結合阻止抗体2. E2-CD81結合3. その他の結合蛋白
    • III. サロゲートモデルによるレセプター解析
      • 1. 代用実験系(サロゲートモデル)の開発2. シェードタイプウイルスを利用した実験系
2. 肝炎のより臨床的な問題
  • (1) B型肝炎治療の動向(ラミブジン, adefovir, entecavir)………神代龍吉, 井出達也, 佐田通夫
    • I. ラミブジン
      • 1. 本邦におけるラミブジンの抗ウイルス効果と耐性化2. 抗ウイルス療法のコンセンサス3. 欧米のB型肝炎の治療の方針4. 慢性肝炎以外のHBV感染症の治療動向5. ラミブジン単独療法のジレンマと突破口
    • II. Adefovir
    • III. Entecavir
  • (2) HBV genotype(田中靖人, 溝上雅史
    • I. わが国におけるHBV genotypeの分布と病態
    • II. HBV/Bのsubtypeとその臨床的意義
    • III. HBV/Aの亜型分類法の開発およびウイルス学的・臨床的特徴
      • 1. 簡便な分類法の開発2. ウイルス学的・臨床的特徴
  • (3) C型肝炎治療の動向(PEG-IFN, PEG-IFN+リバビリン, プロテアーゼ阻害薬)………今関文夫
    • I. PEG-IFNの薬物動態
    • II. PEG-IFNの単独の治療成績
      • 1. PEG-IFNα2a2. PEG-IFNα2B
    • III. PEG-IFNとリバビリン併用治療の成績
      • 1. 1. PEG-IFNα2a2. PEG-IFNα2b
    • IV. 今後のIFN治療
    • V. プロテアーゼ阻害薬
      • 1. BILN-20612. VX-9503. 耐性株出現の問題
  • (4) 劇症肝炎―移植のタイミング………滝川康裕, 遠藤龍人, 鈴木一幸
    • I. 内科的治療および肝移植による救命の実態
    • II. 移植適応および禁忌
      • 1. わが国における移植適応2. 欧米における移植適応3. 移植の禁忌
    • III. 移植のタイミングと移植可能期間の維持
      • 1. 移植のタイミング2. 移植可能期間の維持
  • (5) 移植と肝炎………菅原寧彦, 幕内雅敏
    • I. B型肝炎肝硬変
      • 1. 術前処置2. 再感染予防3. ワクチンネーション
    • II. C型肝炎肝硬変
      • 1. 再発と予後因子2. 再発に対する内科治療3. 再移植
3. 肝癌の診断・治療
  • (1) 肝細胞癌・前癌病変の血流動態………松井修
    • I. 多段階発癌と血流動態の変化
    • II. 肝硬変に伴う肝細胞性結節の血行支配と予後
    • III. 肝癌の流出血流の臨床的意義
    • IV. その他の肝癌の血流あるいは腫瘍内血管に関する研究報告
  • (2) 造影ハーモニック法による肝癌の診断と治療………南康範, 川崎俊彦, 工藤正俊
    • I. 原理と方法
    • II. 臨床応用の可能性と限界
      • 1. 診断への応用2. 治療効果判定への応用3. 造影下穿刺への応用4. 現時点の限界と今後の展開
  • (3) MDCTによる肝細胞癌診断の進歩………村上卓道, 金東石, 堀雅敏
    • I. Dynamic studyの撮像法
    • II. Dynamic study各相の役割
    • III. 3次元画像表示
  • (4) SPIO造影MRIによる肝細胞癌診断の進歩………廣橋伸治, 丸上永晃, 吉川公彦
    • I. フェルモキシデスとフェルカルボトランの相違点
      • 1. 検査時間2. 血流評価の可能性
    • II. 肝細胞癌の診断
      • 1. 古典的肝細胞癌2. 高分化型肝細胞癌
  • (5)Gd-EOB-DTPAによる肝癌と前癌病変の鑑別………北村敬利, 市川智章, 大友邦
    • I. 構造と動態
    • II. 投与法と撮像法
    • III. 肝細胞癌の診断
    • IV. 今後の展望
  • (6) 肝癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)………椎名秀一朗, 寺谷卓馬, 小俣政男
    • I. 適応
    • II. 方法
    • III. 成績
  • (7) 進行肝癌に対するIFN併用化学療法………永野浩昭, 左近賢人, 門田守人
    • I. IFN併用化学療法の背景
    • II. IFN併用化学療法の対象と方法
    • III. 現在までの治療成績
    • IV. IFN併用化学療法の作用機序
  • (8)肝癌根治後IFNによる再発抑制治療………久保正二, 西口修平
    • I. 肝癌切除後の再発病態
      • 1. 再発の頻度2. 再発の危険因子
    • II. IFNによる肝癌再発抑制効果
    • III. IFNによる肝癌治療後長期予後の改善
    • IV. 肝癌切除後IFN療法の適応
  • (9) 肝細胞癌に対する肝移植………高田泰次, 上田幹子, 田中紘一
    • I. 脳死肝移植におけるミラノ基準
    • II. 肝細胞癌に対する生体肝移植
    • III. 京都大学での生体肝移植
    • IV. 今後の課題と展望
4. 非ウイルス性肝障害(含アルコールとNASH)
  • (1) 肝を侵す先天代謝異常疾患の原因遺伝子と病態
    • (1) 成人発症II型シトルリン血症………佐伯武頼, 小林圭子
      • I. 成人発症II型シトルリン血症とは
      • II. CTLN 2原因遺伝子と変異の頻度
      • III. シトリンの機能と病態との関連
      • IV. シトリンの機能に基づく治療法の検討
    • (2) Wilson病………原田大, 佐田通夫
      • I. Wilson病とは
      • II. 肝細胞での銅代謝
      • III. Wilson病での遺伝子変異
      • IV. 症状
      • V. 診断
      • VI. 治療
    • (3) 新たに見出されたヘモクロマトーシス………新津洋司郎, 加藤淳二, 藤川幸司
      • I. HFE以外のHC遺伝子
      • II. フェリチン遺伝子の点突然変異によるHC
  • (2) アディポサイトカイン, アンジオテンシンと肝線維化………鎌田佳宏, 田村信司, 松澤佑次
    • I. 肝線維化と肝星細胞について
    • II. アディポサイトカインと肝線維化
      • 1. レプチンと肝線維化2. アディポネクチンと肝線維化
    • III. アンジオテンシンと肝線維化
  • (3) 肝細胞脂肪化の分子機構………河田純男, 渡辺久剛, 斉藤貴史
    • I. 食欲調節に基づく体重制御の分子機構
      • 1. 短期的な調節機序2. 長期的な調節機序
    • II. 肝細胞における脂肪蓄積の分子機構
      • 1. FFA, インスリンによる脂肪蓄積2. MTP活性亢進3. レプチンによる脂肪蓄積の抑制4. グレリン, PYY
  • (4)肝細胞の物質輸送とトランスポーター………設楽悦久, 佐藤 均, 杉山雄一
    • I. 肝細胞の取り込みに関与するトランスポーター群
      • 1. NTCP2. OATPファミリートランスポーター3. OATファミリートランスポーター4. OCTファミリートランスポーター
    • II. 肝細胞からの汲み出しに関与するトランスポーター群
      • 1. MRPファミリートランスポーター2. MDR 1, MDR33. BSEP4. ASBT5. BCRP
    • III. 肝病態時におけるトランスポーターの発現変動
      • 1. NTCP2. OATP3. MRP4. BSEP
    • IV. 遺伝子多型に伴うトランスポーターの発現/機能変化
      • 1. OATP-C2. MDR1
  • (5) サイトカインのシグナル伝達制御と炎症性疾患………吉村昭彦, 吉田隆文, 緒方久修
    • I. CIS/SOCSファミリー
    • II. CIS, SOCS分子群の生理機能
      • 1. CIS 12. SOCS 23. SOCS 14. SOCS 3
    • III. SOCSと炎症性疾患
      • 1. 大腸炎2. 関節炎3. 肝炎
  • (6) 原発性胆汁性肝硬変における樹状細胞ケモカイン受容体発現制御………三井浩子, 河田純男, 山川光徳
    • I. 樹状細胞とは
    • II. ケモカイン, ケモカイン受容体とは
      • 1. ケモカインとは2. ケモカイン受容体とは
    • III. 原発性胆汁性肝硬変と樹状細胞
      • 1. 肝臓における免疫担当細胞2. PBCにおけるDCの関与3. 胆管上皮内のDCの局在
    • IV. 原発性胆汁性肝硬変とケモカイン