ALSをやさしく解説


ALS(筋萎縮性側索硬化症)マニュアル

ALSと共に生きる

  • 【訳】 遠藤 明
  • 【編集】 アメリカALS協会
  • 【ISBN】 4-88875-102-1
  • 【本体価格】 1,800円
  • 【刊行年月】 1997年 12月
  • 【版組】 B5
  • 【ページ数】 143ページ
  • 【在庫】 あり

ALSをやさしく解説。患者本人、家族および患者のケアに携わる可能性のある人々にもこの病気を理解しやすいようわかりやすくまとめた書。
訳者まえがきより
世の中に数ある難病の中でも、ALSは独特の位置を占めています。随意運動を司る神経細胞が死滅していくことにより、随意運動以外の機能は保たれたまま、呼吸筋まで侵されていきます。生活を続けていくためには、人工呼吸器の助けを借り、他人に世話をしてもらわなければなりません。
ALSの診断を受けた人とその家族が、この病気について詳しく知り、将来へ向けての準備ができるようにすることが、この本の必要な第一の理由です。ALSについての医学的な知識はまだ十分ではありません。しかし、ALSの患者さんが少しでも生きやすくするための技術は進んできています。ALSの原因を究明し、根本的な治療法を見つける努力を続ける一方で、現在ある技術を応用して生きやすい環境を作っていく必要があります。
ALSの患者数は現在全国で約4千人と言われています。これは特定疾患治療研究事業の対象者数ですので、実際にはもっと多くの患者さんがいらっしゃるとは思いますが、それでも実際にALSの患者さんに会ったことのある人の数はそれほど多くないことでしょう。ALSのケアに携わる可能性のある保健・医療・福祉従事者とボランティアの方たちに、ALSについて知っていただくこと、それがこの本の必要な第二の理由です。
病気が進んできたときに人工呼吸器の助けを借りるのかどうか、それは文字どおり命をかけた決断です。アメリカでは、人工呼吸器をつけて生きていくことは、莫大な医療費の負担を背負うことを意味します。日本では、国民皆保険の中で、アメリカよりは少し楽に思われますが、それでも身の回りの世話を中心に多くの費用がかかることは間違いありません。生きることを続けるか否かの決断を、経済的な要因に支配させることをやめたい、そのために多くの人にこの病気のことを理解してもらわなければなりません。それがこの本の必要な第三の理由です。
ALSについて知ることは、私たちに「生きるということはどういうことなのだろう」という疑問を提起します。私たちは毎日何気なく生きているように思っていても、実際には多くの人たちの力を借り、多くの人たちと意思疎通を行いながら生きています。ALS の患者さんたちも死ぬ日がくるまで同じように生きていきたいと願っています。そんな社会を作っていくために努力が続けられています。全国でいくつかの地域ではALSの患者さんたちをサポートするためのネットワークが作られています。そんなネットワークを全国に広げようという動きも進んでいます。巻末に全国ALS診療ネットワークに参加していただいた医療機関の名簿を載せました。もちろん医療機関の力だけでできることは限られています。実際にはそこから地域の中に輪が広がって、ALSの患者さんたちが苦労しながらも当たり前に生きていくことのできる社会が生まれていくことを願っています。
目 次
第一部 基 礎
第1章 ALSとは
  • ALSについてのQ&A
    • MND(運動ニューロン疾患)とALS
    • ALSの発見
    • ルー・ゲーリック病
    • amyotrophic lateral sclerosis の意味
    • 神経とは、ニューロンとは
    • ニューロンの働き
    • 体を動かす神経
    • 随意運動とは
    • 神経が死ぬ原因
    • 運動ニューロン死の原因についての一つの仮説
    • ALSの徴候と症状
    • ALSの原因
    • ALSの進行
    • ALSの治療
    • ALSの発症時期と頻度
    • ALSの病型
    • 球症状とは
    • ALSで侵されないもの
    • ALSの影響
    • ALSと共に生きる
  • 支援
    • 支援を得るには
  • 保険
    • 知っておかなければならないこと
    • 処方薬
    • 四肢筋力低下の経済的影響
      • 医療機器
      • 家屋改造/自助具
      • 在宅支援
      • ナーシングホーム
    • 球症状の経済的影響
      • 言語障害
      • 嚥下困難
      • 呼吸困難
    • 医療チーム
    • 雇用
      • 障害者基本法
      • 介護休暇疾病休暇法
    • 所得保障
      • 短期長期障害給付
      • 障害社会保障給付
      • 補足社会保障
    • 医療保障
      • 被用者保険
      • 1985年予算改革法(COBRA)
      • 老人医療保険
      • 老人医療保険HMO
      • 老人医療保険と他の保険
      • 医療扶助
      • その他の支援
第2章 変化への適応
  • 診断への適応
    • 旅の始まり
    • 診断への反応-著者の観察
  • 知性の適応
    • 適応過程
    • 受容
    • 自己保存
    • 意思決定
    • 異常で孤立した感覚
  • 感情の適応
    • 世話すること
    • 友情と愛情
  • 人生への適応
    • あなたと私だけの話
第3章 症状をおさえる治療
  • ALSの原因として考えられていること
    • 家族性/遺伝性の原因
    • グルタミン酸過剰
    • 環境因子
    • 免疫異常
    • 神経成長因子
  • 症状と治療法の選択肢
    • 痙攣
    • 疲れやすさ
    • 感情の不安定さ
    • 尿切迫
    • 手や足の腫れ
    • よだれ
    • 濃い痰、後鼻腔への鼻水
    • あごのふるえ
    • 喉頭痙攣
    • 胸やけ
    • 鼻づまり、耳閉
    • 便秘
    • 睡眠障害
    • 鬱/不安
    • 嚥下困難
    • 言語障害
    • 息切れ
  • 治療の選択肢
    • Rilutek(リルゾール)
    • Myotrophin、IGF-1
    • BDNF(脳由来神経栄養因子)
    • GDNF(膠細胞由来神経栄養因子)
    • Neurontin(ギャバペンチン)
    • SR 57746A
  • 他の治療法の選択肢
  • 注意しなければならない治療法
  • ALSの最終段階の選択肢
    • 末期医療
    • ホスピス
第4章 動作が不自由になってきた時
  • 理学療法、作業療法
  • 骨、筋肉、関節症状
    • 座ること
    • 運動
    • 柔軟性
    • 優先順位
  • 機器
    • 歩行の補助
      • 歩行器
      • 補装具
    • 車椅子
      • 車椅子を使い始めるのはいつか
      • 車椅子の種類
      • 手動車椅子
      • 電動車椅子
      • 車椅子の座席
      • 姿勢を保持するために車椅子で使う道具
    • トランスファー(移乗)
      • 道具を使わないトランスファー
      • 立ち上がる
      • 立って方向をかえる
      • 座ったままのトランスファー
      • 寝た位置から起き上がる
      • ベッドの上で動く
      • 道具を使ったトランスファー
      • リフト
    • 日常生活動作
      • 日常生活動作を行う
      • 食事をする
      • 風呂やシャワーを使う
      • 身繕いをする
      • 洋服を着る
      • 介護者に着せてもらう
      • ベッドの中での移動
    • 家屋改造
      • 狭いドア
      • 家屋改造のその他の選択肢
      • 改築
      • 家庭での安全性を高める
第5章 嚥下困難と言語障害
  • 飲み込む
    • ALSではどのように嚥下障害が起こるか
    • 筋力低下によってうまく食べられなくなった時どうするか
    • 唾液をコントロールする
    • バランスのとれた食事を保つために
      • ファイバーは何故必要か
      • どんな飲み物を何度くらい飲んだらいいか
    • 最適体重は
      • 蛋白質とカロリーの摂取量を増やすには
      • 食事をどのように変えればいいか
      • 食べ物を軟らかくしたり、補給食を使っても十分な食事をとることができなくなったら
    • 話すこと
      • 言葉がうまく言えなくなったら
      • ヒント
      • 他人の助け
      • ALS患者と話す時のヒント
      • 電話を使う
      • あなたが話すことを理解してもらえなくなったら
    • 意思伝達装置
      • どのように選べばよいか
      • 意思伝達装置の種類
      • 簡単な方法
      • 高度技術を使った方法
      • コンピュータの入力装置
      • 障害者アクセス協会
      • 補助
第6章 呼吸困難
  • 呼吸の基本
    • 正常な肺機能
  • あなたの肺とALS
    • ALSの肺への影響
      • 呼吸筋が弱くなる
      • 球症状と呼吸困難
      • 咳の効果の減少
      • 睡眠中の呼吸困難
      • 進行性呼吸筋力低下
    • よく起こる呼吸器疾患
  • 肺を健康に保つ
    • 効果的な咳をするには
    • 肺機能の状態を知るには
  • 呼吸症状に対応する
    • 計画することが不可欠です
    • あなたの決定を伝える
  • 補助呼吸の種類
    • 非侵襲的人工呼吸
      • 経鼻陽圧人工呼吸
      • 経口陽圧人工呼吸
      • BiPAP-S/T
      • CPAP
      • 他の補助呼吸装置
    • 気管切開
      • 気管切開の利点
      • 気管切開の欠点
      • 気管切開による陽圧人工呼吸
      • 気管切開と会話弁
    • 酸素の必要性
  • 人工呼吸器について決心する
    • 考えなければならない要因
    • 在宅人工呼吸
      • 在宅人工呼吸で起こりうる問題
    • どんな費用がかかるか