DOPPS-透析臨床にもたらしたimpact
Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study
- 【監修】
黒川 清
- 【編集】
秋澤 忠男
- 【編集】
斎藤 明
- 【編集】
秋葉 隆
- 【編集】
福原 俊一
- 【ISBN】
978-4-88875-253-4
- 【本体価格】
3,800円
- 【刊行年月】
2013年 02月
- 【版組】
B5版
- 【ページ数】
180ページ
- 【在庫】
なし
「DOPPSの意味と意義-黒川 清」より引用
DOPPSは,先進欧米各国での透析医療の現場での実態を,とくにいくつかの仮説を設定するのではなく,多角的に臨床データを収集する大規模なプロジェクトであり,1990年半ばに始められた.さらに,このような研究が私企業の支援で始まったところにもその社会的貢献への意欲がみられる.(中略)
十数年にわたるDOPPSの成果は,グローバル化する情報社会にあって,医療政策や患者の選択肢,専門家と学会の関係,私企業の社会貢献等々に多くの課題を示した画期的プロジェクトであるといえよう.(後略)
序 編集の意図:DOPPS Way and Spirit-編集者一同より引用
この書籍を企画した第一の目的は,DOPPSというかつて例を見ない壮大かつ長期間にわたる国際的な研究プロジェクトの全容,本質,成果そしてその臨床的・社会的意義を,透析医療に係わるすべての皆さまに,わかりやすくご理解いただくことである.
第二の目的は,従来の医学研究が,疾患の機序解明,治療法の開発,およびその効果の検証を目的にしたものがほとんどを占めてきたなかで,DOPPSは独自性のきわめて高い研究目的と研究デザインで計画・実施されたその画期性をわかりやすく解説することである.(中略)
第三の目的は,DOPPS研究は,「研究のための研究(例:病態機序に関する新規知見の発見のみを目的とした研究)」ではなく,「診療を変えるための研究」,「政策を変えるための研究」であったことをお伝えすることである.(中略)
本書を読まれた皆様の一人でも多くが,DOPPSのような臨床的・社会的意義の高い研究を自ら実施あるいは参加しようと思われることを,著者全員が切望する.たとえ研究に従事されなくても,日々の診療における疑問の解決において,「DOPPS Way and Spirit」とでも言える科学的アプローチや精神を活かしていただきたいと希望するものである.
目次
- 第1章DOPPSはどんな手法で、何を明らかにしようとしたのか?
- 第2章DOPPSとは何か?
- 1.DOPPSを図解する
- 2.DOPPSと臨床試験はどこが違うのか?
- 3.DOPPSの目的: リサーチ・クエスチョンで分類する
- 1)病気と診療の実態やばらつきを記述する研究
- 2)病気の要因とアウトカムの関連を調べる研究
- 3)治療の効果を調べる研究
- 第3章 DOPPS研究がもたらした透析臨床へのメッセージ
- [透析処方]
- 1) Kt/Vの国際比較
- 2)透析時間と生命予後
- 3)血流量と生命予後
- 4)バスキュラーアクセスの種類の国際推移
- 5)Kt/Vと生命予後
- 6)バスキュラーアクセス形態と生命予後
- [骨カルシウム代謝]
- 1)透析液カルシウム濃度と生命予後
- 2)ビタミンD投与―生命予後への有用性には疑義がある
- 3)PTH値と生命予後
- 4)血清カルシウム濃度,血清リン濃度,血清副甲状腺ホルモン濃度と生命予後の関連
- 5)シナカルセトと生命予後
- [貧血治療]
- 1) ヘモグロビンレベルとESA投与量の国際比較
- 2) ヘモグロビンレベルとESA投与量の年次推移
- 3) 鉄剤の種類と投与量の国際間比較と年次推移
- 4) ヘモグロビンレベルの変動と生命予後
- 5) ヘモグロビンレベルと健康関連QOL
- 6) ヘモグロビンレベルに関連する因子
- [その他]
- 1) QOL―健康関連QOLは死亡や入院を予測する因子となりうる
- 2) うつ―透析患者においてうつは死亡率上昇と関連する
- 3) 糖尿病―血液透析を受けている糖尿病患者における健康関連QOLと総死亡との関連
- 4) 透析患者のうつ症状と,将来の痒みの発生には関連があるか?
- 5) 睡眠障害―睡眠の質は,透析患者の生命予後と健康関連QOLを予測するか?
- 6) 医療関係者との接触頻度―医師による診察時間と,患者の主観的アウトカム(QOL,満足度)との関連
- 第4章 DOPPSのもたらしたもの
- [DOPPSの波及効果]
- 1) 臨床研究デザイン塾-DOPPSのもうひとつの果実
- 2)J-CLIP
- 3)DOPPSに参加して診療現場に何が起きたか?
- [DOPPSは日本および世界の透析医療に何をもたらしたか?]
- 1) 日本の透析診療ガイドラインに与えた影響
- 2)日本の医療政策に与えた影響
- 3)世界の透析医療に与えた影響
- 4)結局のところ,DOPPSから何がわかったのか?
- 第5章 日本から発信されたDOPPS研究/J-DOPPS研究
- 1.血液透析患者の腎性貧血管理にerythropoiesis stimulating agent (ESA)包括化が及ぼした影響
- 2.血液透析患者におけるC-反応性蛋白質(CRP)と死亡率
- 3.より早期で頻回の保存期腎専門医診療は血液透析導入後の低い早期死亡リスクと関連している
- 4.透析膜の生体適合性と機能により貧血,エリスロポエチン製剤使用量と予後は異なるか?
- 5.ガイドラインの治療指針の修正により,日本の透析患者の推定生存年数はどう変わるか?
- 6.日本における貧血管理の変化と患者予後
- 7.継続的なアスピリン投与は新規血液透析患者における動静脈瘻内シャント開存期間を改善する
- 8.血液透析患者において,糖尿病の併存,血糖コントロールと総死亡は関係があるか?
- 9.血液透析患者における骨ミネラル代謝と生命予後
- 10.高カルシウム血症は血液透析患者におけるメンタルヘルスを低下させる
- 11.うつを有する透析患者への治療パターン、および死亡リスクとの関連性
- 12.DOPPS研究での透析施設における長い入院期間と早期再入院との関連の,二次性副甲状腺機能亢進症例における検討と考察
- 13.日本の血液透析患者における骨ミネラル代謝因子と貧血管理
- 14.DOPPSによる日本と欧米の透析処方の差異
- 15.世界3地域の透析患者における健康関連QOLの比較
- 付録
- [DOPPSの研究デザイン]
- 1) コホート研究とは?
- 2)DOPPSのサンプリング方法
- 3)アウトカムとは何か?
- 4)調整因子とは何か?
- [DOPPSの組織]
- DOPPS phase Ⅰ~Ⅴ-参加国とおもな活動