大腸疾患診療のStrategy

(1) 読者対象は，消化器内科の現場にいる内科医，内視鏡医．
(2) 日常診療でパッと参照できるように（棚に入ったままの書籍とならないように）
(3) 図表を多用．
(4) 外科の項目については，内科医が知りたいこと，疑問を解決するような内容とする

多彩な大腸疾患を正しく診断するためには正しいプロセスを経る必要があり，治療法には押さえるべきポイントとコツがある．これら診断・治療を日常臨床で実践するためにはStrategyが必要である．従来の教科書では診断・治療の項目間の関連性があまり意識されているとは言い難く，Strategyやプロセス・コツといったものが読者に伝わっては来なかった．また，画像は呈示されていても鑑別診断の意識に乏しく，読んでいて，あるいは見ていて引き込まれることはなく，おもしろくない，興味が沸かないものが多かった．
今回多くの優れた消化器病専門医の協力を得て，「大腸疾患診療のStrategy」を出版することとなったが，特徴を端的に言えば，本書は「大腸疾患の診断・治療のstrategyがわかるアトラス」であり，かつ消化器内科の現場の第一線でする内科医，内視鏡医向けの専門書でありながら「消化器内科医に必要な外科的知識も網羅して書かれている」点である．

第I部 疫学

1 大腸がんの疫学斎藤 博，雑賀公美子

2 がん薬物療法の効果判定 朝倉敬子，武林 亨

第II部 病理

1 疾病理解のための病理解剖 大倉康男

2 臨床医に必要な病理組織学的事項 大倉康男

第III部 疾患と鑑別診断

大腸腫瘍性病変診断のStrategy 岡 志郎，田中信治

炎症性腸疾患診断のStrategy 斉藤裕輔，富永素矢

• 1 大腸病変の診断のポイント （上皮性/非上皮性，腫瘍/非腫瘍） 岡 志郎，田中信治
• 2 上皮性腫瘍 岡 志郎，田中信治
  • 隆起性病変／陥凹性病変／LSTとは／隆起性病変（腺腫）／隆起性病変（腺腫内癌）／隆起性病変（SM多量浸潤癌）／隆起性病変（進行癌）／陥凹性病変（腺腫～M癌）／陥凹性病変（SM多量浸潤癌）／陥凹性病変（進行癌）／LST
• 3 悪性リンパ腫 中村昌太郎，松本主之，飯田三雄
  • MALTリンパ腫／DLBCL（潰瘍型）／成人T細胞白血病リンパ腫（びまん型）／マントル細胞リンパ腫（隆起型）
• 4 カルチノイド 斉藤裕輔，富永素矢
  • 小さな直腸カルチノイド／悪性カルチノイド／直腸follicular lymphoma
• 5 粘膜下腫瘍（カルチノイド以外） 斎藤彰一，池上雅博，田尻久雄
  • 脂肪腫／リンパ管腫／間葉系腫瘍／腸管嚢腫様気腫症／血管腫／腸管子宮内膜症／肛門腺嚢胞／リンパ濾胞増殖症／悪性リンパ腫／転移性腫瘍
• 6 血管拡張症 相原弘之，斎藤彰一，田尻久雄
  • 血管拡張症（A1+B1およびB2型）／アメーバ性大腸炎
• 7 炎症性腸疾患（クローン病，潰瘍性大腸炎） 髙津典孝，池田圭祐，松井敏幸
  • クローン病／潰瘍性大腸炎
• 8 感染性腸炎 五十嵐正広
  • 細菌性腸炎／カンピロバクター腸炎／O-157腸炎／アメーバ性大腸炎／腸結核
• 9 過敏性腸症候群（IBS） 奥村利勝
• 10 虚血性大腸炎 小林清典，横山 薫，佐田美和
  • 虚血性大腸炎（一過性型）／虚血性大腸炎（狭窄型）／抗生物質起因性出血性大腸炎／腸管出血性大腸菌腸炎(O-157:H7)
• 11 薬剤性腸炎 平田一郎
  • 抗生物質起因性腸炎／NSAID腸炎／その他
• 12 ベーチェット病（単純性潰瘍） 堺 勇二，小林広幸，蔵原晃一
  • 定型病変／非定型病変
• 13 直腸粘膜脱症候群 斉藤裕輔，垂石正樹
  • 直腸粘膜脱症候群（潰瘍型）／直腸粘膜脱症候群（深在嚢胞性大腸炎型）／直腸癌
• 14 Cap polyposis 赤松泰次
  • Cap polyposis／直腸粘膜脱症候群
• 15 静脈硬化症 西村 拓，松井敏幸
  • 特発性腸間膜静脈硬化症
• 16 急性出血性直腸潰瘍 佐野弘治，大川清孝，上田 渉
  • 急性出血性直腸潰瘍／CMV腸炎を合併した急性出血性直腸潰瘍
• 17 宿便性潰瘍 清水誠治
  • 宿便性直腸潰瘍
• 18 肛門疾患 松田保秀，田中荘一
  • 尖圭コンジローマ／痔核／痔瘻／肛門部の癌
• 19 憩室症 田村 智
  • 尖圭コンジローマ／痔核／痔瘻／肛門部の癌
• 20 腸管子宮内膜症 清水誠治
  • 腸管子宮内膜症
• 21 放射線性腸炎 斉藤裕輔，小澤賢一郎
  • Sherman 分類grade 1a／Sherman 分類grade 1b／Sherman 分類grade 2／Sherman 分類grade 3／潰瘍性大腸炎
• 22 腸間膜脂肪織炎 道傳研司，海崎泰治，細川 治
  • 腸間膜脂肪織炎
• 23 好酸球性胃腸炎 高津典孝，松井敏幸
  • 好酸球性胃腸炎（predominant subserosal disease）／ループス腸炎
• 24 Schonlein-Henoch紫斑病 松井佐織，大川清孝，上田 渉
  • 腹部症状が先行したSchonlein-Henoch紫斑病
  • クローン病と鑑別が必要であったSchonlein-Henoch紫斑病
• 25 Collagenous colitis 石原裕士，松井敏幸
  • Collagenou colitisの内視鏡所見
• 26 GVHD（移植片対宿主病） 河南智晴
  • 急性GVHD／偽膜性腸炎を合併した急性GVHD／腸管型TAM
• 27 アミロイドーシス 江口洋之，多田修治
  • AAアミロイドーシス／ALアミロイドーシス
• 28 膠原病に伴う大腸病変 小林広幸，堺 勇二，蔵原晃一，渕上忠彦
  • 血管炎による大腸病変／RA患者の大腸血管炎（疑診例）／RA患者のNSAID起因性大腸潰瘍／RA患者のサイトメガロウイルス腸炎（ステロイド抵抗例）
• 29 腸結核 松川正明
  • 腸結核でみられる各所見
• 30 腸管嚢腫性気腫症 川崎啓祐，小林広幸，堺 勇二
  • 腸管嚢腫性気腫症(潰瘍性大腸炎に合併した例) ／腸管嚢腫性気腫症（盲腸癌術後の経過観察中に認めた例）
• 31 Large (sessile) hyperplastic polyp / Sessile serrated polyp (SSP) 佐野 寧，岩館峰雄，生本太郎
  • Large (sessile) hyperplastic polyp / Sessile serrated polyp (SSP)
• 32 ポリポーシス 平田一郎
  • 家族性大腸腺腫症／Peutz-Jeghers症候群／若年性ポリポーシス／Cronkhite Canada 症候群／Cowden病／過形成性ポリポーシス(hyperplastic polyposis)

第IV部 治療

早期大腸癌治療のStrategy 田中信治

• 腺腫と癌の鑑別診断の必要性
• 早期癌の深達度からみた治療のStrategy

大腸進行癌治療のStrategy 石原聡一郎，渡邉聡明

• I．内視鏡治療
  • 1 ポリペクトミー 岡 志郎，田中信治
  • 2 内視鏡的粘膜切除術（EMR） 岡 志郎，田中信治
  • 3 内視鏡的粘膜下層剥離術（ESD）田中信治，大庭さやか
  • 4 狭窄拡張術（良性狭窄に対する拡張術） 斉田芳久
  • 5 ステント留置術（悪性狭窄に対する拡張術） 斉田芳久
  • 6 止血術 岡 志郎，田中信治
  • 7 内視鏡治療（polypectomy/EMR/ESD）の偶発症と対策 田中信治，岡 志郎
• II．薬物療法
  • 1 炎症性腸疾患に対する治療 高山哲朗，岡本 晋，日比紀文
  • 2 感染性腸炎に対する治療 五十嵐正広
  • 3 過敏性腸症候群（IBS）の治療 奥村利勝
  • 4 下痢・便秘に対する治療 山名哲郎
  • 5 痔核に対する治療―外用薬，坐薬，内服薬による治療，内視鏡的治療 松田保秀
• III．化学療法（化学放射線療法）
  • 1 癌
    • 1) 結腸癌―開腹術 石原聡一郎，渡邉聡明
    • 2) 直腸癌の外科治療 衣笠哲史，赤木由人，白水和雄
    • 3) 開腹手術と腹腔鏡下手術 榎本雅之，杉原健一
  • 2 悪性リンパ腫, MALTリンパ腫 田近正洋，中村常哉
  • 3 消化管間質腫瘍 西田俊朗，高橋 剛
• IV．内科医に必要な外科治療の知識
  • 1 癌の外科治療
    • 1) 結腸癌―開腹術 石原聡一郎，渡邉聡明
    • 2) 直腸癌の外科治療 衣笠哲史，赤木由人，白水和雄
    • 3) 開腹手術と腹腔鏡下手術 榎本雅之，杉原健一
  • 2 炎症性腸疾患の外科治療 飯合恒夫，野上 仁，畠山勝義
• V．フォローアップ
  • 1 大腸内視鏡治療後のサーベイランス 桐山真典，松田尚久，斎藤 豊
  • 2 大腸癌術後のサーベイランス 上野秀樹，橋口陽二郎，長谷和生

第V部 特殊な大腸癌

1 遺伝性大腸癌

• 1) リンチ症候群（HNPCC）, 家族性大腸腺腫症 松原長秀
• 2) 遺伝相談（遺伝カウンセリング） 菅野康吉

2 Colitis associated cancer/dysplasia 松田圭二，渡邉聡明

コラム

抗凝固薬・抗血小板薬の休薬期間 日山 亨，田中信治

画像強調観察

(1) Narrow Band Imaging（NBI）による大腸腫瘍の質的診断 田中信治

(2) Flexible spectral Imaging Color Enhancement (FICE) 冨樫一智，山本博徳

(3) Autofluorescence Imaging (AFI) 藤谷幹浩，盛一健太郎，高後 裕

大腸の pit pattern 分類 樫田博史

肛門鏡・直腸鏡 山名哲郎

直腸癌の化学療法 森脇俊和，遠藤慎治，兵頭一之介

大腸異物に対する処置

(1) 直腸異物摘出の2例と治療方針（手術適応を含めて） 松田圭二，渡邉聡明

(2) 腸閉塞を発症し内視鏡的に摘出可能であった終末回腸内異物の1例 斉藤裕輔，鈴木 聡