大腸疾患NOW 2006

  • 【【監修】】 武藤 徹一郎
  • 【【編集】】 渡辺 英伸/杉原 健一/多田 正大
  • 【ISBN】 4-88875-179-X
  • 【本体価格】 8,000円
  • 【刊行年月】 2006年 01月
  • 【版組】 B5判
  • 【ページ数】 230ページ
  • 【在庫】 なし

大腸癌診断におけるpit patternの役割,virtual colonoscopyの役割,広基性腫瘍の治療,micrometastasisの意味付け,直腸癌に対する肛門温存術,転移性大腸癌の治療,などの課題はどれを取っても時代の最先端の課題であり,本書の中にその解答と問題点が随所に埋め込まれている.大腸カルチノイドと内分泌細胞癌は第62回大腸癌研究会アンケート調査の結果報告であるが,その他にも同研究会におけるプロジェクト研究の成果が報告されており,大腸癌研究会における活動の内容の一端がよく分かる.
Crohn病と潰瘍性大腸炎の日米比較が報告されているが,これも最新の情報として大変役に立つ内容を含んでいる.
大腸疾患NOW 2006 序文
本書はさまざまな学会,研究会,班会議などで大腸疾患に関して得られた知見,結論を毎年1冊の本にまとめて,できるだけ多くの専門家,医療関係者に知ってもらうことを目的として企画された.Annual Bookであるから,年によってその内容が大幅に異なってくるのは避けられない.今年で3年目になるが,当初は取り上げる課題が足りなくなり,内容も十分に満足できるものではなくなるかもしれないという心配もあったのであるが,本書を一読してその心配はまったくの杞憂であることがわかった.これは大腸疾患に関する最近の研究が,著しく進歩・発展していることの証であるということができよう.本書の内容は間違いなく過去の号よりはるかに充実しており,立派な教科書の態をなしていると言ってよい.
大腸癌診断におけるpit patternの役割,virtual colonoscopyの役割,広基性腫瘍の治療,micrometastasisの意味付け,直腸癌に対する肛門温存術,転移性大腸癌の治療,などの課題はどれを取っても時代の最先端の課題であり,本書の中にその解答と問題点が随所に埋め込まれている.大腸カルチノイドと内分泌細胞癌は第62回大腸癌研究会アンケート調査の結果報告であるが,その他にも同研究会におけるプロジェクト研究の成果が報告されており,大腸癌研究会における活動の内容の一端がよく分かる.今後もプロジェクト研究の成果が続々と登場するであろう.最後に,クローン病と潰瘍性大腸炎の日米比較が報告されているが,これも最新の情報として大変役に立つ内容を含んでいる.
初めに述べたように,本書の内容はバラエティーに富んでおり,内科,外科の両面を幅広くカバーしていて読んでいても飽きることがない.本年度は大腸疾患研究の豊作の年であると同時に,企画も大変良かったのだと自画自賛しているがご賛同いただけるだろうか.これはひとえに,執筆者の意気込みに負う所が少なくないと感謝している.この分だと,世界へ向けての発信も夢ではないだろう.一層の発展を期待したい.
目 次
第1章 大腸癌診断の進歩
1.pit pattern診断 工藤 進英,他
  • I.pitとは
  • II.sm深達度診断
  • III.基本的pit patternと組織像
  • IV.拡大内視鏡観察の意義
    • 1.腫瘍と非腫瘍の鑑別
    • 2.腫瘍の質的診断
    • 3.癌の深達度診断
    • 4.切除範囲の同定,腫瘍残存の有無の確認
  • V.pit patternに基づく深達度診断
  • VI.肉眼形態から見たpit pattern診断
    • 1.陥凹型病変のpit pattern
    • 2.隆起型病変のpit pattern
    • 3.平坦型病変のpit pattern
  • VII.pit patternからみた治療方針
2.大腸癌の生体内細胞観察---pit patternの細胞レベルでの観察とEndo-Cytoscopy Systemの開発 大植 雅之,他
  • I.色素散布と色素染色性
  • II.Ⅴ型pitの細胞レベルの特徴
    • 1.V型pitに共通の形態像---islet sign
    • 2.V型pitの細分類---V1pitとVNpit
  • III.細胞レベルの超拡大内視鏡の開発
  • IV.今後の展望
3.virtual colonoscopyの現況と問題点
  • (1)virtual colonoscopyの現況と未来 小田 雄一,他
  • I.VCの現況
    • 1. 腸管前処置
    • 2. 撮影方法とデータ処理
    • 3. 読影と診断
    • 4. VCの診断能
  • II.VCの問題点
    • 1. 指摘困難な病変の存在
    • 2. 読影時間を含めた検査時間の長さ
    • 3. 放射線被曝
  • III.VCの大腸癌検診への導入に向けて
  • (2)CT colonographyの現況と問題点 小倉 敏裕,他
  • I.CTによる大腸検査の実際
  • II.CT colonography作成の実際
  • III.CT colonographyの問題点
    • 1.解像力の低さ
    • 2.読影の問題
    • 3.問題点の克服
4.MRI診断 今井 裕
  • I.撮像法
    • 1.前処置法
    • 2.撮像条件の考え方
    • 3.実際の撮像法
  • II.画像所見
    • 1.正常腸管壁の描出
    • 2.癌の腫瘍成分と信号強度
    • 3.癌の深達度診断
    • 4.リンパ節転移の診断
  • III.他の検査法との比較
第2章 大腸広基性腫瘍に対する内視鏡治療
1.内視鏡的粘膜下層剥離術
  • (1)処置具選択とESDの適応 豊永 高史,他
  • I.大腸ESDの実際
  • II.大腸ESDに使用される処置具とその特徴
    • 1.高周波発生装置(electro-surgical unit; ESU)
    • 2.切開処置具(Endo-Knives)
    • 3.アタッチメント/先端透明フード
    • 4.局注液の選択
    • 5.止血処置具
    • 6.その他の工夫
  • III.困難例とその対策
  • IV.偶発症
  • V.中止例
  • VI.成績
    • 1.LST-GとNGの比較
    • 2.ESDの適応
  • VII.遺残・再発例
  • (2)STフードとヒアルロン酸ナトリウムを用いた大腸LSTに対するESD 砂田 圭二郎,他
  • I.当科でのESD
    • 1.鎮静,モニタリング
    • 2.局注剤
    • 3.局注
    • 4.粘膜切開
    • 5.粘膜剥離
    • 6.血管処置,止血法
    • 7.治療戦略
  • II.成績
    • 1.対象
    • 2.成績
    • 3.偶発症
  • III.考察
    • 1.一括切除の有用性
    • 2.分割切除との比較
3.分割切除 田中 信治,他
  • I.大きな大腸腫瘍の病理学的特性
  • II.分割切除には拡大観察が必須である
  • III.LSTに対するEMRの実際
  • IV.分割切除標本は本当に病理診断不能か
  • V.分割EMRと局所遺残再発
  • VI.大腸ESDの適応
4.遺残再発をめぐる諸問題 斉藤 裕輔,他
  • I.対象と方法
  • II.深達度からみた治療法の原則
  • III.早期大腸癌に対する治療内容
  • IV.早期大腸癌に対する内視鏡治療の詳細
  • V.内視鏡治療後の再発例の詳細
第3章 大腸癌におけるmicrometastasis
1.外科の立場から(総論) 上野 秀樹,望月 英隆,他
  • I.予後因子としての意義
  • II.郭清・切除範囲がcontroversialな領域のmicrometastasis
  • III.Sentinelリンパ節のmicrometastasis
  • IV.直腸癌における術前(化学)放射線治療の効果指標
2.病理の立場から(総論) 味岡洋一,他
  • I.免疫組織学的検索方法
  • II.頻度と臨床的意義
  • III.問題点
  • IV.今後の動向と展望
3.微小転移を知るための工夫 風間 伸介,他
  • (1)抗サイトケラチンCAM5.2染色
  • I.CAM5.2染色
    • 1.染色方法と注意点
    • 2.判定の問題点
    • 3.今後の問題点
  • II.CAM5.2染色を用いた微小転移検出の意義
  • III.これまで報告されてきた広義のリンパ節微小転移と,AJCCガイドラインで定義された狭義の微小転移との相違とその問題点
  • (2)抗CK20抗体免疫染色 進士 誠一,他
  • I.免疫組織化学染色
  • II.抗CK20抗体を用いたリンパ節微小転移の臨床的意義
    • 1.微小転移の定義
    • 2.対象と方法
    • 3.抗CK20抗体免疫染色
    • 4.微小転移の頻度と臨床病理学的因子との関連
    • 5.無再発生存率・生存率との関連
  • III.リンパ節微小転移の生物学的意義
  • (3)リンパ節中CEA 加納 寿之,他
  • I.実験1:リンパ節から蛋白を抽出しCEA値を検討することは可能か
    • 1.対象および方法
    • 2.結果
  • II.実験2 :リンパ節中CEA値での微小転移診断は可能か
    • 1.対象および方法
    • 2.結果
  • III.考察
  • IV.今後の課題
  • (4)遺伝子診断 高田 理
  • I.cDNA arrayの種類
  • II.cDNA arrayの原理と手法
  • III.データ解析とその問題点
  • ;IV.大腸癌臨床検体を用いたcDNA arrayの実際
第4章 直腸癌に対する肛門温存手術
1.外科の立場から(総論) 寺本 龍生
  • I.腹会陰式直腸切断術(APR)
  • II.肛門温存手術(SPO)
    • 1.前方切除術
    • 2.貫通術式
    • 3.経肛門的結腸肛門吻合術(PAA)
    • 4.器械を用いた吻合術
    • 5.colonic pouch手術
    • 6.intersphincteric resection
    • 7.腹腔鏡下前方切除術
2.さまざまな手術手技の工夫
  • (1)後方切除術 正木 忠彦,他
  • I.歴史的背景
    • 1.会陰切除術
    • 2.仙骨切除術
    • 3.腹仙骨式切除術
    • 4.Mason術式(trans-sphincteric resection)
    • 5.経仙骨的切除術(trans-sacral resection)
  • II.わが国における後方切除術の現況
  • >(2)前方切除術 飯合 恒夫,畠山 勝義
  • I.前方切除術とは
  • II.低位前方切除術の変遷
  • III.低位前方切除術の適応
  • IV.リンパ節郭清範囲
  • V.自律神経温存手術
  • VI.吻合法
  • VII.pouchの作成
  • (3)結腸嚢肛門(管)吻合術 肥田 仁一,他
  • I.J再建による機能改善と吻合不全の減少
  • II.J再建の問題点
    • 1.pouch作製結腸
    • 2.pouchのサイズ
    • 3.J再建の適応
    • 4.2年以上の長期機能
  • III.その他のpouch operation
  • IV.高齢者に対するJ再建
  • (4)肛門括約筋切除術 山田 一隆,他
  • I.肛門括約筋切除術の方法と治療成績
  • II.肛門括約筋切除術の根治性と適応
  • III.肛門括約筋切除術後の排便機能とQOL
  • (5)術前放射線・化学療法 井上 靖浩,楠 正人,他
  • I.術前照射か術後照射か
  • II.術前放射線療法,放射線・化学療法
    • 1.術前高線量短期間照射
    • 2.他臓器浸潤(T4)直腸癌に対する術前放射線・化学療法
    • 3.括約筋温存のための術前放射線・化学療法
    • 4.術前放射線・化学療法の切離断端
    • 5.術前放射線・化学療法における手術時期
  • III.当科における術前放射線・化学療法
第5章 転移性大腸癌の治療
1.大腸癌肝転移に対する熱凝固療法の現状 小森 康司,加藤 知行,他
  • I.対象,方法
  • II.アンケート結果
  • III.結果
    • 1.各施設におけるMCT,RFAの施行状況と対象
    • 2.大腸癌原発巣の状況
    • 3.肝転移治療時の状況
    • 4.当該治療前治療
    • 5.治療時平均年齢
    • 6.原発巣手術から肝転移当該治療開始までの期間
    • 7.当該治療を選択した理由
    • 8.治療回数,個数
    • 9.熱凝固療法を施行した転移巣区域
    • 10.アプローチ
    • 11.同時併用療法
    • 12.治療効果および予後
    • 13.合併症
    • 14.肝転移状況および実際の施行方法と治療効果(肝転移遺残,奏功度)との関係
  • V.考察
    • 1.MCTとRFAの使い分け
    • 2.安全性
    • 3.将来への展望
2.わが国における大腸癌の補助療法 島田安博,他
  • I.国内での手術単独との比較試験成績
  • II.TAC-CRおよびN・SAS-CC-01試験成績の概略と解説
  • III.最近の海外大規模比較試験の成績の国内導入に関する考察
第6章 大腸カルチノイドおよび内分泌細胞癌
1.大腸カルチノイドおよび内分泌細胞癌 河内 洋,小池 盛雄
--- 第62回大腸癌研究会アンケート調査結果を中心に
  • I.アンケートの概要
  • II.カルチノイド
    • 1.症例数,発生部位
    • 2.壁深達度と臨床病理学的因子
    • 3.治療
  • III.内分泌細胞癌
    • 1.症例数,発生部位
    • 2.壁深達度と臨床病理学的因子
    • 3.内分泌細胞癌の組織像
    • 4.治療
2.大腸の内分泌細胞癌 岩渕三哉,他
  • I.消化管内分泌細胞腫瘍の概念と分類
    • 1.概念
    • 2.分類
  • II.大腸内分泌細胞癌の特性
    • 1.組織細胞像
    • 2.癌巣構築と肉眼像
    • 3.悪性度
  • III.大腸内分泌細胞癌の組織診断の手順
    • 1.内分泌細胞腫瘍の判定
    • 2.内分泌細胞癌とカルチノイド腫瘍との鑑別
    • 3.内分泌細胞癌と非内分泌系腫瘍との鑑別
    • 2.分類
  • IV.大腸内分泌細胞癌の組織発生
3.虫垂の杯細胞性カルチノイド 岩下明徳,他
  • I.歴史的事項
  • II.組織像と生物学的悪性度
  • III.本腫瘍の名称
  • IV.組織学的分類
  • V.組織発生
  • VI.分子生物学的解析
  • VII.治療法の選択
第7章 炎症性腸疾患をめぐる最近の話題
1.Crohn病の治療---日米間の相違 松井 敏幸
  • I.疾患頻度
  • II.医療制度
  • III.治療法
    • 1.栄養療法
    • 2.ステロイド治療と免疫抑制剤
    • 3.手術
    • 4.死亡率
2.潰瘍性大腸炎の治療---日米間の相違 棟方 昭博,他
  • I.潰瘍性大腸炎の内科的治療
    • 1.治療目的と治療法の選択基準
    • 2.軽症~中等症の治療
    • 3.重症,激症例の治療
    • 4.難治性潰瘍性大腸炎に対する治療
    • 5.緩解維持療法
  • II.日米における現在研究開発中の薬剤のトピックス
    • 1.Tacrolimus
    • 2.Infliximab
3.Pouchitisの診断と治療 福島 浩平,他
  • I.Pouchitisの診断
    • 1.臨床症状
    • 2.内視鏡検査所見
    • 3.組織学的所見
    • 4.除外診断,その他
  • II.Pouchitisの治療