大腸疾患NOW 2005
- 【【監修】】
武藤 徹一郎
- 【【編集】】
渡辺 英伸/杉原 健一/多田 正大
- 【ISBN】
4-88875-169-2
- 【本体価格】
5,800円
- 【刊行年月】
2004年 12月
- 【版組】
B5判
- 【ページ数】
210ページ
- 【在庫】
なし
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序 文
日本対がん協会からの報告によれば、2002-2003の間のがんによる死亡者数は前年より4,897人増えて309,400人に達した。その中で、大腸癌は1,234人増えて38,902人が亡くなっている。増加数をみる限り残念ながら大腸癌は第1位の座を占めている。この傾向が続く間は、大腸癌の重要性が失われることはないだろう。
この様な時代的背景に鑑みて、昨年「大腸疾患NOW2004」が刊行された。大腸癌が主体であるが、がんのみならず炎症性疾患も含む大腸疾患のすべてについて、その年報告された重要な情報を一つにまとめて読者の需要に供するのが目的であったが、幸いに「大腸疾患NOW2004」は好評であった。所期の目標通り、ここに「大腸疾患NOW2005」を刊行することができるのは大変喜ばしいことである。今回は、1年間の大腸疾患に関する研究成果あるいは大腸癌研究会における委員会、研究班の最新情報の域を越えて、さらに広範な領域からの情報が掲載されていて、まことに有意義な一冊となっていることは、一読していただければ分るであろう。
わが国においては大腸癌のchemopreventionはあまり注目されたはいないが、欧米では盛んに研究されており、かなり水を開けられている状況であるが、3本の代表的論文からその状況が汲み取れる。最近の日常診療上、最も問題となるEMRに関しての他方面からの分析は、臨床家にとって大変役立つに違いない。大腸癌研究会での腹腔鏡下手術に関するアンケート調査、プロジェクト研究の結果も簡潔にまとめられていて、有用な論文になっている。大腸癌化学療法の現状は、現時点でのこの分野の状況が総説的に述べられており、若い読者にとって大変理解し易いであろう。肛門扁平上皮癌という、ごく稀な疾患226例の分析などという報告は、研究会のアンケート調査にして初めて可能な仕事であり、今後永く利用可能なデータが数多く含まれている。炎症性腸疾患に関する記載には厚労省の班会議のデータも含まれており大変有用である。
この様に見てくると、本書は「2004」とは内容がかなり異っていて、より教科書的であるが、含まれている豊富なデーターと充実性には変りがない。本書が前書に増して読者に愛読され、日々の診療の場で活用されることを願って止まない。
2004年11月
武藤 徹一郎